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ベスが。
向かっていく。
雪が。
踏み抜かれ、白い粉が弾ける。
カゲロウの二本の黒刀が。
同時に動いた。
キィンッ!!
正面から。
刃と刃が噛み合う。
金属がぶつかる瞬間、火花が散り、夜の白さの中に一瞬だけ橙の線が走る。
ベスの腕に。
衝撃が骨まで響く。
そのまま。
押し込む。
足裏が雪を削り、膝が沈む。
カゲロウが。
片方の刀を滑らせた。
刃がベスの剣の側面をなぞり、耳障りな金属音が甲高く鳴る。
もう一本が。
横から迫る。
ベスは。
身体を捻る。
冷たい刃が頬の皮一枚を裂き、熱い線が走る。
髪が数本、空中で切れて舞った。
そのまま。
剣を振り抜く。
カゲロウが。
一歩下がる。
雪が靴裏で「ザッ」と鳴る。
ベスは。
追う。
斬る。
弾く。
踏み込む。
呼吸が白く砕け、視界の端で雪煙が揺れる。
黒刀が。
次々と迫る。
ギィン!
キィン!
金属音が。
山肌に反響し、耳の奥に残響が刺さる。
刃がぶつかるたびに、火花が散り、雪の粒が溶けて小さな黒い点になる。
ベスの剣と。
二本の黒刀。
三つの刃が。
何度も交差する。
カゲロウが。
片方の黒刀を。
逆手に持った。
刃の角度が一瞬で変わる。
ベスの剣を受ける軌道が、ねじれるようにずれる。
そのまま。
手首を返す。
刃が。
滑るように動いた。
金属が擦れる嫌な音が、耳の奥を引っ掻く。
「……!」
軌道が。
変わる。
ベスは。
咄嗟に身体を引いた。
黒刀が。
目の前を通り過ぎる。
風圧で頬の皮膚が押される。
だが。
その刃は。
さらに角度を変えた。
雪を削るように軌道を折り、戻る。
ベスの肩へ。
ギィンッ!!
獣爪が。
刃を受け止める。
金属と骨のような硬質な衝突。
火花が散る。
視界の端が一瞬白く弾ける。
腕に痺れが走る。
カゲロウが。
もう一本の黒刀を振る。
空気が裂ける音が遅れて耳に届く。
ベスは。
剣で弾く。
刃同士がぶつかり、衝撃で手のひらが痺れる。
その瞬間。
カゲロウの身体が。
懐へ入った。
距離が消える。
刃ではない。
柄が。
迫る。
ドンッ!!
「っ……!」
腹に。
鈍い衝撃。
肋骨の内側に響くような重さ。
息が一瞬止まり、肺の空気が押し出される。
ベスの身体が。
わずかに浮く。
そのまま。
後ろへ跳ぶ。
雪を踏みしめる。
着地のたびに雪が潰れ、冷たい水気が靴裏に染みる。
カゲロウは。
追ってこない。
二本の黒刀を。
静かに構えている。
刃先がわずかに揺れ、雪の反射光を細かく切り裂く。
ベスが。
口元の血を拭う。
指先に温かい感触が残る。
剣を握り直す。
柄が汗と血でわずかに滑る。
再び。
踏み込む。
今度は。
右から。
剣を振る。
空気が裂け、刃が白い軌跡を残す。
カゲロウが。
左刀で受ける。
金属がぶつかり、火花が散る。
その瞬間。
右刀が。
低く走った。
雪面すれすれを滑るように迫る。
ベスは。
獣爪を下げる。
ガキィン!!
低い位置での衝突。
衝撃が足元から膝へ突き上がる。
そのまま。
押し返す。
雪が靴裏で軋み、地面が沈む。
カゲロウが。
刀を引く。
金属が擦れる音が短く鳴る。
ベスも。
一歩踏み込む。
剣が。
黒刀を弾く。
二本目へ。
そのまま。
身体を回す。
一閃。
空気ごと切り裂く音。
カゲロウの外套が。
裂けた。
布が裂ける音が遅れて響き、黒い布片が雪の上に落ちる。
ベスは。
止まらない。
もう一度。
踏み込む。
雪が爆ぜるように跳ねる。
カゲロウが。
笑う。
黒刀が。
交差する。
ベスの剣を。
左右から挟む。
ギギギギッ……。
刃と刃が噛み合い、金属が悲鳴のように軋む。
押し合う力で、空気が震える。
ベスの足が。
雪へ沈む。
膝までわずかに埋まる。
カゲロウの足も。
沈む。
だが姿勢は崩れない。
そのまま。
互いに。
押し返す。
ベスが。
力を込める。
腕の筋が浮き、肩が軋む。
黒刀が。
わずかに開いた。
そこへ。
剣を滑り込ませる。
金属の隙間に刃がねじ込まれる感触。
カゲロウが。
片方の刀を離した。
「!」
空間が一瞬軽くなる。
ベスが。
踏み込む。
だが。
次の瞬間。
離したはずの黒刀が。
カゲロウの手元へ戻った。
金属が空気を切る音が、背後から遅れて届く。
ベスは。
反射的に身を引く。
黒刀が。
鼻先を掠める。
皮膚が裂ける寸前の冷たい風圧。
カゲロウが。
再び構えた。
「……。」
ベスは。
剣を構える。
呼吸が白く揺れる。
カゲロウは。
笑っていた。
二本の黒刀が。
雪の中で。
ゆっくり揺れる。
刃先が光を拾い、細かく瞬く。
そして。
また。
同時に踏み込んだ。




