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バル  作者: 隣の猫
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417



雪道を。


ベスたちは進んでいた。


一歩。


また一歩。


足が。


深い雪へ沈む。


吐く息が。


白くなる。


ノアは。


灰猫を腕の中に抱いていた。


灰猫は。


丸くなったまま。


ノアの腕の中で暖を取っている。


しばらく。


誰も口を開かなかった。


その時。


前方に。


大きな影が見えた。


雪の中に。


銀色の毛が浮かんでいる。


ベスが。


足を止める。


大きな身体。


ふさふさとした毛。


静かな瞳。


銀色の狐。


北の大陸の守護獣。


銀狐だった。


リシアが。


小さく息を吐く。


「……銀狐」


銀狐は。


ベスたちを見つめていた。


そして。


ゆっくりと口を開く。


「来たのね」


女性の声。


ベスが。


一歩前へ出る。


「聞きたいことがある」


「残された光のこと?」


「ああ」


銀狐は。


静かに頷いた。


「知っているわ」


「残された光がある場所も」


ベスの目が。


わずかに開く。


「場所を知ってるのか?」


「ええ」


銀狐は。


雪山の奥へ視線を向ける。


「この先よ」


ベスも。


その方向を見る。


白い山。


その奥。


まだ見えない場所に。


残された光がある。


「……じゃあ」


ベスが。


前へ出ようとする。


その時。


銀狐が。


ベスを見た。


「ベス」


「ん?」


「あなた一人で。


先へ進んでほしいの」


ベスの足が。


止まる。


「……俺だけ?」


「あそこへ行くのは。


ベス一人よ」


「どうして?」


ベスは。


銀狐を見る。


銀狐は。


少しだけ目を伏せた。


「今は。


まだ話せないわ」


「……」


ベスは。


仲間たちを見る。


ガルド。


レオン。


アイラ。


リシア。


ノア。


そして。


ノアの腕の中にいる灰猫。


「みんなは?」


「私がここで預かるわ」


銀狐は。


穏やかに言った。


「心配しなくていい」


ベスは。


黙っていた。


理由は。


分からない。


けれど。


銀狐が。


何かを知っている。


そんな気がした。


ベスは。


銀狐の横を通り過ぎようとする。


その時。


「ベス」


再び。


名前を呼ばれる。


ベスが。


足を止める。


銀狐は。


前を向いたまま。


静かに言った。


「……カゲロウがいるわ」


「……!」


ベスの身体が。


反応する。


思わず。


振り返ろうとする。


「ベス」


銀狐の声が。


止める。


「振り向かないで」


ベスの動きが。


止まる。


「……」


何か。


ある。


詳しいことは。


分からない。


けれど。


銀狐が。


自分だけを先へ進ませること。


そして。


カゲロウの名前。


その二つが。


ベスの中で。


何となく繋がった。


銀狐が。


静かに続ける。


「仲間のことは。


私に任せなさい」


ベスは。


しばらく黙っていた。


やがて。


前を向く。


「……分かった」


一度。


息を吐く。


「任せた」


銀狐は。


小さく頷いた。


ベスは。


そのまま。


雪道の先へ進み始めた。


背中へ。


冷たい風が吹く。


それでも。


振り返らなかった。


やがて。


ベスの姿が。


雪の向こうへ消えていく。


その場には。


銀狐と。


ベスの仲間たちが残った。


そして。


ここから。


二つの時間が。














別々に動き始める。

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