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バル  作者: 隣の猫
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413/430

ウェラバウト



最後の魔物が。


雪の上へ倒れた。


静かな港に。


荒い息だけが残る。


ベスは。


剣を下ろした。


白い息が。


目の前で消えていく。


「……終わったな。」


レオンが。


大剣を下ろす。


エインも。


大弓を背へ戻した。


ボルグは。


大楯を下ろしながら。


港の奥を見渡す。


ガルドは。


灰色の剣を鞘へ収めた。


「怪我人を確認するぞ。」


「はい、団長。」




その時だった。


建物の陰から。


人が飛び出してくる。


「助かった!」


「ありがとう!」


「本当に……助かった!」


一人。


また一人。


港の人々が。


ベスたちのもとへ駆け寄ってくる。


「もう駄目かと思った……!」


「魔物が急に襲ってきて……!」


「皆さんが来てくれなかったら……。」


ベスは。


少し戸惑いながら。


周囲を見る。


「怪我をした人は?」


「何人かいます!」


リシアが。


すぐに動く。


「案内してください。」


「はい!」


港の人が。


リシアを連れていく。


その横で。


エインが。


倒れた建物を見ていた。


大弓を背負ったまま。


静かに周囲を確認する。


ボルグも。


崩れた壁へ目を向ける。


「魔物だけじゃないな。」


低い声だった。


ベスも。


その言葉に周囲を見る。


壊れた建物。


折れた柱。


雪の上に残る。


黒い跡。


魔物が暴れた跡とは。


少し違っていた。


ガルドが。


近くにいた港の男へ声をかける。


「何があった。」


男は。


一瞬だけ言葉を失った。


そして。


ゆっくりと口を開く。


「……黒い霧です。」


ベスの目が。


細くなる。


「黒い霧?」


「はい。」


男は。


震える手で港の奥を指した。


「突然、港に黒い霧が現れました。」


「その中から……人が出てきたんです。」


「何人だ?」


ガルドが聞く。


「分かりません。」


「霧が濃くて……。」


男は。


唇を噛む。


「でも。」


「出てきた奴らが……。」


「港を壊しました。」


ベスは。


黙って聞いていた。


西で見た。


黒い霧。


その中から現れる。


虚無の使徒。


「その後は?」


ガルドが尋ねる。


男は。


港の外を見た。


「魔物が出てきました。」


「黒い霧の中から……次々と。」


「俺たちは逃げるしかなかった。」


レオンが。


険しい顔になる。


「魔物を放ったってことか。」


男は。


頷いた。


「はい。」


その時。


別の港の人間が。


小さく声を上げた。


「……まだあります。」


ガルドが。


そちらを見る。


「何を見た。」


「黒い霧が消えたあとです。」


「港の奥から……。」


男は。


言葉を選ぶように。


一度、息を吸った。


「白い羽が舞っていました。」


ベスの表情が変わる。


「白い羽……。」


エインが。


静かに顔を上げる。


ボルグも。


港の奥を見る。


ガルドは。


何も言わない。


男は続ける。


「白い羽が……空からたくさん落ちてきて。」


「そのあと。」


「黒い霧と……白い羽が。」


「一緒に、奥へ向かっていきました。」


ベスは。


港の奥を見る。


山へ続く道。


その先は。


雪に覆われて見えない。


「……奥へ?」


男は。


頷く。


「ああ。」


「どこへ向かったのかは分かりません。」


「ただ……。」


「黒い霧も。」


「白い羽も。」


「同じ方向へ消えていきました。」


静かになる。


レオンが。


大剣へ手を置く。


「虚無の使徒と……神の先兵か。」


ベスも。


港の奥を見つめる。


どちらも。


知らない相手ではない。


西で。


何度も戦った。


虚無の使徒。


そして。


白い羽を持つ神の先兵。


その二つが。


北の大陸で。


同じ方向へ向かった。


ガルドが。


しばらく黙っていた。


やがて。


低い声で言う。


「……山の奥か。」


ベスは。


頷く。


「はい。」


ガルドは。


港の奥を見つめたまま。


それ以上は何も言わなかった。


ただ。


灰色の剣へ。


一度だけ手を添えた。


ベスも。


山の向こうを見る。


そこには。


何があるのか。


まだ分からない。


けれど。


黒い霧と白い羽が。


同じ場所へ向かった。


その事実だけが。














静かな港に残っていた。

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