スターリー
夜。
グリムファングは静かな海を進んでいた。
ベスは一人、甲板に立っていた。
空を見上げる。
雲一つない夜空。
無数の星が、静かに瞬いている。
しばらく、その星を眺めていた。
すると。
背後から声がした。
「眠れないのか?」
振り返る。
ガルドだった。
「うん。」
ベスが答える。
ガルドは隣まで歩いてくる。
そして空を見上げた。
「そういう時もある。」
その時。
船室の方から足音が聞こえてきた。
「お前さんたちも寝んのか。」
エインだった。
その後ろからボルグも顔を出す。
「ベス。」
「お前もちゃんと寝ないとな。」
ボルグが笑う。
「寝ないと大きくなれんぞ。」
ベスは振り返る。
「子供扱いすんなよ。」
「ははは!」
ボルグが豪快に笑った。
エインも肩を揺らす。
「まだまだ子供じゃろう。」
「違うって。」
ベスが少しむっとする。
そのやり取りを聞きつけたのか。
船室から、ノアが顔を出した。
「何してるの?」
その後ろからリシア。
アイラ。
レオン。
灰猫も姿を現す。
「星を見てる。」
ベスが空を指差す。
「星?」
ノアが甲板へ出てくる。
全員が自然と空を見上げた。
誰も何も言わない。
ただ。
星を眺める。
旅の途中。
戦いの合間。
こうして全員で空を見上げることなど、いつ以来だっただろう。
波の音。
帆の揺れる音。
夜の静けさ。
それだけが甲板を包んでいた。
やがて。
ベスの頬を冷たい風が撫でる。
「……寒くなってきたな。」
レオンが腕をさする。
ガルドは海の向こうへ目を向けた。
「北が近い。」
その言葉に、ベスも前方を見る。
暗い海の向こう。
まだ何も見えない。
それでも。
風が教えてくれている。
次の大陸が近い。
ガルドが空を見上げる。
「そろそろ寝ろ。」
「明日には着く。」
「はい。」
ノアが返事をする。
「じゃあ、おやすみ。」
一人。
また一人。
みんなが船室へ戻っていく。
最後に残ったベスも、もう一度だけ空を見上げた。
星は変わらず輝いていた。
そして。
冷たい北風が、静かに吹き抜けた。




