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バル  作者: 隣の猫
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ダズント



西の街には。


まだ、復旧の音が残っていた。


崩れた石を運ぶ音。


折れた木材を集める音。


瓦礫の向こうから聞こえる、人々の声。


完全に元へ戻ったわけではない。


それでも。


街は少しずつ。


元の姿を取り戻し始めていた。


ベスは。


仲間たちと一緒に、その作業を眺めていた。


レオンが。


大きな木材を肩に担いで歩いていく。


「重いな、これ。」


「お前がそれ言うのか?」


アイラが笑う。


その横では。


ボルグがさらに大きな木材を軽々と担いでいた。


「まだまだ鍛え方が足りんな。」


「だからお前と比べるなって。」


レオンが苦笑する。


少し離れた場所では。


エインが壊れた木箱を積み直している。


「まったく。」


「戦いが終わったと思えば、今度はこれか。」


そう言いながらも。


手は止まらない。


その隣では。


ノアが小さな石を一つずつ拾っていた。


「これ、ここ?」


「うん。」


リシアが頷く。


「ありがとう、ノア。」


「えへへ。」


ノアは嬉しそうに笑った。


その光景を。


ガルドは静かに見ていた。


戦いは終わった。


だが。


街にはまだ傷跡が残っている。


それでも。


人々は動いている。


生きている。


その時だった。


足元を。


小さな影が横切った。


一匹。


また一匹。


ベスは振り返る。


街のあちこちから。


猫たちが集まっていた。


灰色。


白。


黒。


茶。


小さな猫から。


少し大きな猫まで。


みんな。


一匹の前へ向かって歩いていく。


そこにいたのは。


灰猫だった。


灰猫は。


集まってきた猫たちを見回す。


「……なんじゃ。」


一匹が。


灰猫の足元へ座る。


また一匹。


その隣へ。


やがて。


何十匹もの猫が。


灰猫を囲んだ。


灰猫は。


しばらく黙っていた。


そして。


小さく息を吐く。


「仕方ないのう。」


灰猫が。


ゆっくりと目を閉じる。


淡い光が。


その身体から広がった。


ふわり。


光が地面を這う。


一匹。


また一匹。


猫たちの身体へ。


小さな光が宿っていく。


ノアが目を輝かせる。


「猫さん……!」


灰猫は。


猫たちを見回した。


「しばらくの間じゃ。」


「この街を頼んだぞ。」


猫たちが。


それぞれ顔を上げる。


一匹が。


瓦礫の向こうへ走っていく。


別の一匹は。


家々の間を駆け抜ける。


また一匹は。


街の入口へ向かう。


それぞれが。


自分の場所へ散っていった。


ノアは。


その後ろ姿を見送っている。


「みんな、守ってくれるの?」


「ああ。」


灰猫が答える。


「そういうことじゃ。」


その光景を。


レオンはしばらく眺めていた。


そして。


ふと思いついたように口を開く。


「なあ。」


灰猫が振り返る。


「なんじゃ。」


レオンが。


少しだけ笑う。


「俺にも加護くれよ。」


一瞬。


静かになる。


灰猫は。


レオンをじっと見た。


頭の先から。


足元まで。


ゆっくり眺める。


「……お主には無理じゃ。」


「即答かよ。」


灰猫が。


レオンの前まで歩いてくる。


そして。


ぴょん。


前足を上げた。


ぺた。


肉球が。


レオンの額に当たる。


「お主には猫耳は似合わんからのう。」


「そこなのかよ!」


アイラが吹き出す。


リシアも。


口元を押さえて笑っている。


ノアは。


レオンの額を見て笑った。


「猫さんの肉球!」


「そこ笑うところか!?」


エインが肩を震わせる。


ボルグも。


ガルドまで。


小さく笑っている。


「団長まで笑ってんじゃねぇか!」


「悪い。」


「絶対悪いと思ってないだろ!」


街に。


久しぶりの笑い声が響いた。


ベスも。


自然と笑っていた。


壊れた街。


失われたもの。


それでも。


残った人たちは。


ここで生きていく。


そのために。


灰猫は猫たちへ力を託した。


ベスは。


その光景を静かに見つめる。


そして。


空を見上げた。


残された光は。


まだある。


だから。


旅は続く。


ガルドが。


仲間たちへ声を掛ける。


「そろそろ出発するぞ。」


「おう。」


エインが立ち上がる。


ボルグも荷物を肩へ担ぐ。


ノアは。


最後にもう一度。


猫たちの走っていった方向を見る。


「またね、猫さんたち。」


灰猫が。


小さく鼻を鳴らす。


「達者でな。」


仲間たちは。


それぞれグリムファングへ向かって歩き出した。


ベスも。


最後に一度だけ。


街を振り返る。


壊れた場所。


戻り始めた日常。


そして。


その街を見守る猫たち。


ベスは。


小さく頷いた。


そして。


仲間たちと共に。




















グリムファングへ乗り込んだ。

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