シェンス
キィン!!
白い剣を受け流す。
続けてもう一撃。
ベスは身体を捻る。
火花が散る。
呼吸が乱れる。
押し返したい。
踏み込みたい。
だが。
身体が動かない。
「っ……!」
三人の神の先兵が距離を取った。
ベスは剣を構え直す。
「……何だ。」
追撃は来ない。
三人は静かに立っていた。
互いを見る。
言葉はない。
その沈黙は、戦いの終わりではなく――
何かが“始まる前の空白”のようだった。
その瞬間。
ひらり。
白い羽が舞った。
一枚。
二枚。
やがてそれは“落ちる”のではなく、
空間そのものから滲み出るように現れ始める。
無数の羽が三人の周囲を巡る。
だがそれは風に流されているのではない。
まるで意思を持つように、
三人の輪郭をなぞり、形を確かめている。
「……!」
嫌な予感が走る。
羽が触れた瞬間。
三人の身体が揺らいだ。
崩れるのではない。
“解かれている”。
白い光が、内側から滲み出す。
皮膚でも肉でもない。
存在そのものが、光へと変換されていく。
輪郭が溶ける。
境界が消える。
一人。
また一人。
声もなく。
抵抗もなく。
ただ当然の帰結のように。
光へ還っていく。
そして。
三つの光が、互いを拒まず重なった。
衝突ではない。
融合でもない。
“再構成”。
眩い白。
地下水路の闇を押し潰すほどの輝き。
ベスは思わず目を細める。
「何を……。」
光が収束する。
そこに“立っていた”ものは。
一人の神の先兵だった。
だがそれは、先ほどまでの延長ではない。
三人が一つに
“戻った”
のではなく、三人が一つとして
“組み直された”
存在。
翼は大きく広がり。
その一枚一枚が、まるで呼吸するように微かに明滅している。
乱れていた羽は整然と並び、
しかしその並びは自然ではなく、
幾何学的な秩序として配置されていた。
地上で負った傷は消えている。
だがそれは治癒ではない。
最初から
“傷という概念が存在しない形”
へ書き換えられたようだった。
ベスは息を呑む。
「……戻ったのか。」
神の先兵は何も答えない。
ただ静かに。
白い羽へ手を伸ばす。
その動きすら、もはや“動作”ではない。
空間がそう動くことを選んだだけのように見えた。
一枚の羽が舞う。
それは落ちる途中で形を失い、
光へとほどけ、
再び“意味”を持つ。
長く。
鋭く。
一本の槍となる。
神の先兵は、その槍を静かに握った。
白い瞳が。
真っ直ぐベスを見据える。
「排除を再開する。」
その声だけが。
静かな地下水路へ、異質な余韻を残して響いた。




