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バル  作者: 隣の猫
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ウェザー



広い空間。


崩れた石柱。


静かな地下水路。


ベスはゆっくりと周囲を見渡した。


暗闇の奥。


細い通路が続いている。


「……あっちか。」


地上へ戻る。


仲間の元へ戻る。


今はそれだけだった。


剣を握り直す。


濡れた服が重い。


全身が冷えている。


腕も足も思うように力が入らない。


それでも。


一歩。


踏み出した。


その瞬間。


「目標補足。」


静かな声。


ベスの動きが止まる。


ひらり。


白い羽が舞う。


その瞬間。


胸の奥が跳ねた。


(……またか)


怒りが一気に戻る。


冷水で沈めたはずの感情が、焼けるように浮かび上がる。


仲間に刃を向けたあの光景。


守れなかった距離。


「……お前ら。」


声が低くなる。


今すぐ踏み込みたい。


今すぐ斬り伏せたい。


だが。


身体が遅れる。


怒りだけが先に走り、肉体が追いつかない。


(動け……!)


焦りが生まれる。


その焦りがさらに呼吸を乱す。


暗闇の中から。


三人の神の先兵が姿を現した。


翼は乱れ。


衣は裂け。


身体には、地上で受けた傷が残っている。


それでも。


それぞれの手には白い剣。


「……まだ立つのか」


怒りがさらに強くなる。


だが同時に理解する。


(こいつらも……万全じゃない)


だからこそ余計に焦る。


今なら押し切れるはずなのに。


今なら終わらせられるはずなのに。


身体がついてこない。


三人が同時に踏み込む。


キィン!!


白い剣が振り下ろされる。


ベスは受ける。


火花が散る。


衝撃が腕を突き抜ける。


(重い……!)


続けて二人目。


三人目。


間を置かない連撃。


ベスは剣を流し、受け、捌く。


だが一撃ごとに遅れが生まれる。


怒りが判断を急かす。


身体がそれに追いつかない。


(早く……!)


焦りが喉を締める。


濡れた足元が滑る。


踏み込みが浅くなる。


攻めに転じられない。


「っ……!」


白い剣が頬を掠める。


浅い傷。


だが痛みよりも遅れが悔しい。


(今のは……避けられた)


すぐに次。


キィン!!


受け止める。


腕に重い衝撃。


息が乱れる。


怒りは消えない。


むしろ増している。


なのに。


身体だけが裏切る。


三人の神の先兵も決して万全ではない。


動きは地上より鈍い。


それでも。


連携だけは崩れない。


地下水路に。




















剣戟と、焦りと、怒りだけが響き続けていた。

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