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バル  作者: 隣の猫
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ムーブ




地下水路へ降りる。


冷たい水。


足首をすぐに奪う。


「こら、ノア。」


灰猫が耳を伏せる。


「わしを濡らすでない。」


ノアは苦笑した。


「仕方ないじゃん。」


「水、跳ねてくるんだもん。」


「むぅ……。」


尻尾が不機嫌に揺れる。


だが。


止まらない。


誰も足を止めない。


ノアを先頭に。


ガルドたちは進む。


水音がうるさい。


いや、うるさいを通り越している。


轟音だ。


崩落の余波。


水が暴れている。


流れが速い。


速すぎる。


ガルドが足元を見る。


一歩。


踏み込む。


沈む。


次の瞬間には流されかける。


「……っ。」


レオンが歯を食いしばる。


「足場が死んでるな。」


ボルグが盾を突き立てる。


ギギッ、と嫌な音。


「押されるぞ、これ。」


壁も安定していない。


石柱は割れている。


歯車は砕けている。


道ではない。


崩れた残骸だ。


ガルドは周囲を見た。


「……ここは。」


灰猫が短く言う。


「本来は仕掛けの道じゃ。」


一拍。


「一つずつ解いて進む場所じゃった。」


視線を落とす。


「じゃがな。」


「全部、壊れとる。」


崩落。


一撃。


それで終わっている。


道は“攻略”ではなくなった。


ただの破壊された通路だ。


ガルドが前を見る。


「……ベスは。」


灰猫は鼻を鳴らす。


「流れは読める。」


「奥の間じゃ。」


「一直線に流されとる。」


言い切る。


迷いはない。


その時。


カラン。


音がした。


遠い。


だが確かに。


何かが落ちた音。


白い。


羽。


ガルドの目が鋭くなる。


「……近い。」


レオンが剣を抜く。


遅い。


だが抜く。


「すぐそこか。」


「いや。」


灰猫が首を振る。


「近いが、楽ではない。」


水が跳ねる。


足場が崩れる。


一歩が命取りだ。


「急げば沈む。」


「止まれば追いつけん。」


矛盾した道。


時間がない。


だが走れない。


ガルドは息を吐いた。


短く。


深く。


「……行くぞ。」


一歩。


踏み出す。


水が跳ねる。


「俺たちが着くまでだ。」


剣を握る手に力が入る。


















「耐えろ、ベス。」

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