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バル  作者: 隣の猫
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ホライト



白い羽が舞う。


その一枚一枚が、まるで呼吸のない雪のように戦場へ降り積もっていた。


ベスは踏み込む。


銀色の爪が閃く。


白い刃を弾く。


ガキィン!!


火花が散る。


だが、手応えは薄い。


押し返しているのに、押し返した感覚が残らない。


距離が開く。


二人の白い先兵。


相変わらず。


何一つ変わらない表情。


そこに「戦っている」という実感がない。


ただ、処理されている。


ベスは息を整える。


胸の奥がざわつく。


嫌な予感ではない。


もっと深い。


説明できない圧迫感。


その時だった。


ひらり。


一枚の羽が。


目の前の先兵から離れた。


「……?」


違和感。


戦いの流れから外れた動き。


その羽だけが。


戦場ではなく。


壁の向こうへ流れていく。


一枚。


また一枚。


白い羽は。


まるで意思を持たないはずなのに、何かに導かれるように空へ昇った。


「何だ……?」


ベスの声がわずかに掠れる。


目で追う。


嫌な予感が、形を持ち始める。


羽は高く舞い上がる。


そして。


空中で止まった。


キィン――。


澄んだ音。


それは金属でも魔法でもない。


“決定”の音だった。


羽が。


光へ変わる。


一本。


また一本。


白い光が。


矢の形を取る。


その瞬間。


ベスの呼吸が止まる。


「……まさか。」


理解ではない。


本能が先に叫んでいた。


“まずい”と。


視線の先。


壁の向こう。


ガルド達。


その姿が一瞬だけ見える。


距離はある。


だが、守りはない。


「やめろ!!」


叫ぶ。


喉が裂けるほどの声。


だが、その声は届かない。


届くはずがない。


白い光が放たれた。


一直線。


音より速く。


空気が遅れて裂ける。


白い軌跡が空を切り裂いた瞬間。


ベスの中で何かが冷たく沈む。


恐怖。


それは敵へのものではない。


“間に合わない”という現実そのものへの恐怖だった。


「……っ!!」


ベスは駆け出そうとする。


足が地を蹴る。


だが。


目の前。


二人の白い先兵が静かに立ちはだかった。


そこに怒りはない。


ただ「通さない」という事実だけがある。


「どけ!!」


叫びと同時に剣を振るう。


銀の爪が唸る。


だが白い羽が舞う。


受け止める。


逸らす。


進めない。


一歩が、重い。


間に合わない距離が、確定していく。


視界の端。


白い光が。


仲間たちへ降り注いだ。


その瞬間。


ベスの胸の奥で、何かが音を立てて崩れた。


恐怖が遅れて追いつき。


焦燥が喉を焼き。


そして――



















言葉にならない絶望が、全身を満たしていく。

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