ウォール
白い羽が舞う。
ガルドへ向かう刃を。
ボルグの大楯が受け止める。
ガギィィン!!
「……ガルド。」
ボルグが低く呟く。
一拍。
息を整えるような沈黙。
「こいつ……。」
視線だけが、白い翼を追う。
「今までとは違うな。」
リシアが氷を広げる。
砕かれた羽の軌道を変える。
「ガルドさん!」
短く叫ぶ。
すぐに続ける。
「下がってください!」
一瞬。
ガルドは動かない。
ボルグとリシアを見る。
その間に、白い羽が空を裂く。
「……助かった。」
言葉は短い。
だが、その後に一拍。
飲み込むような間。
「……すまない。」
その沈黙のあと、後方から声が響く。
「団長!」
レオンだった。
大剣を握ったまま、踏み込もうとする。
一歩。
しかし、そこで止まる。
「助けに行くぞ!」
アイラも弓を構える。
だが、すぐには放たない。
狙いを定めたまま、呼吸が止まる。
「ガルドさんだけでは……!」
エインも大弓を持ち上げる。
弦が軋む音だけが響く。
「ガルド。」
エインの声は短い。
それだけで十分だった。
長い時間の重みが、その一言に乗る。
ガルドは一瞬、目を閉じる。
そして開く。
「違う。」
静かに。
だが、はっきりと。
その言葉のあと、空白。
誰も動かない。
風の音だけが通り過ぎる。
ガルドは白い翼を見る。
「こいつの目的は俺じゃない。」
一拍。
「ベスだ。」
沈黙。
レオンの喉がわずかに動く。
だが言葉は出ない。
ガルドは続ける。
「お前らは。」
そこで止まる。
一瞬、視線が揺れる。
「ベスの元へ行け。」
その言葉のあと。
長い一拍。
レオンが目を細める。
そして、ゆっくりと笑った。
「……分かったよ、団長。」
剣を握り直す。
その動作に、迷いはない。
ただ、重さだけがある。
「そっちは任せた。」
アイラも頷く。
一瞬、唇を噛む。
「ベスは私たちが。」
エインが前を見る。
弦を握る手に力が入る。
「任せろ、ガルド。」
三人が走り出す。
その一歩目に、わずかな間。
踏み出すかどうかの、ほんの刹那。
そして。
踏み切る。
その瞬間。
ひらり。
白い羽が落ちた。
レオン達の前へ。
キィン――。
空気が裂けるような音。
白い線が走る。
次の瞬間。
そこには。
白い壁があった。
「……。」
レオンが足を止める。
一拍。
呼吸が止まる。
大剣を構える。
振り下ろすまでに、わずかな間。
ガンッ!!
刃が弾かれる。
「……っ。」
その衝撃のあと、沈黙。
アイラが矢を放つ。
放つまでの一瞬。
息を吸う音がやけに大きい。
風を纏った矢。
白い羽が一枚、静かに動く。
キィン。
軌道が逸れる。
「……。」
アイラの指が弦の上で止まる。
エインが大弓を引く。
引き切るまでの間。
弦の悲鳴が長く響く。
放つ。
轟音。
だが、そのあとに残るのは静寂。
白い壁は、揺れない。
「……通さないか。」
ボルグが低く呟く。
その言葉のあと、少しの間。
白い者は何も言わない。
ただ、そこに立っている。
ガルドを狙う白い翼。
ベスへ向かわせない白い壁。
二つの役割を。
沈黙のまま、同時に果たしていた。




