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バル  作者: 隣の猫
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386/398

レゴグ



ガルドが踏み込む。


灰色の剣。


一直線。


その瞬間。


ひらり。


白い羽が舞った。


一枚。


二枚。


光を帯びた羽が。


形を変える。


白い刃。


キィン――。


澄んだ音が響く。


ガルドの剣の前へ。


刃が滑り込んだ。


ガギィン!!


剣筋が逸れる。


「……。」


ガルドは目を細める。


手には何もない。


なのに。


剣だけが動いた。


その時。


横からレオンが走る。


「ガルド!」


ボルグが合わせて動く。


巨大な大楯。


白い者との間へ。


視界を塞ぐ。


「今だ!」


レオンが踏み込む。


大剣を振り上げる。


一閃。


その瞬間。


白い羽が舞う。


盾の向こう。


見えない場所へ。


羽が集まる。


重なる。


白い盾になる。


ガギィィン!!


大剣が止まった。


「……!」


レオンが息を呑む。


ボルグも目を見開く。


「……見えてねぇはずだろ。」


だが。


白い者は何も答えない。


ただ。


穏やかな笑みを浮かべたまま。


その笑みは、最初から変わらないはずのものだった。


何も見ていない。


何も意識していない。


ただ、そこにあるだけの静かな表情。


羽が再び舞う。


その隙。


アイラの矢が飛ぶ。


風を裂く。


白い羽が一枚。


矢の前へ滑る。


キィン。


軌道が逸れる。


「……。」


アイラが次の矢を構える。


リシアが手を伸ばす。


地面から氷が広がる。


羽の動きを止める。


一瞬。


白い羽の動きが鈍る。


「エイン!」


エインが大弓を引く。


弦が大きく鳴る。


放つ。


巨大な矢が。


一直線に迫る。


その瞬間。


白い羽が集まった。


一枚。


二枚。


重なり合う。


白い壁。


大弓の一撃を受け止める。


轟音。


それでも。


白い者は。


一歩も動かない。


そのまま。


ただそこに在る。


ガルドはその隙を逃さなかった。


踏み込む。


灰色の剣。


最後の一閃。


今度こそ。


届く。


そう思った。


だが。


白い手が。


剣を掴んだ。


「……!」


距離が近い。


初めて。


真正面から見る。


白い翼。


穏やかな微笑み。


空虚な瞳。


そのはずだった。


しかし。


その瞬間。


何かが、途切れた。


それまで崩れることのなかった微笑みが、ほんの僅かに揺らぐ。


“見ていなかったもの”が、そこにあると認識してしまったように。


ガルドという存在が、ただの「近づくもの」ではなくなった瞬間。


白い者の中で、静かに前提が崩れる。


ガルドは気付く。


今まで。


自分たちは見られていなかった。


ただ。


ベスへ近づくものとして。


止められていただけ。


だが。


今。


違う。


白い瞳が。


確かに。




















自分を見ていた。

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