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バル  作者: 隣の猫
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385/429

スリー



三つの白い影が動いた。


ベスは剣を構える。


だが、振るわない。


視線だけが走る。


焼けた街。


崩れた建物。


まだ煙の残る戦場。


ここで全力を出せば、また何かを壊す。


それだけは避けたかった。


白い刃が迫る。


ベスは身体を捻る。


――速い。


だが「重さ」がない。


刃は空間を裂くように通り過ぎる。


次の瞬間、別の角度から二本目。


ベスは後退しながら左腕を上げる。


銀色の爪が展開。


ガキン、と受ける。


しかし衝撃はほとんどない。


押し込まれるのではなく、**“位置だけを奪われる”**ような感覚。


「……っ」


ベスは眉をひそめる。


(力じゃない……?)


三本目の刃が、遅れて“そこにあるべき場所”へ滑り込む。


ベスは紙一重で避ける。


石畳が割れる。


だが爆発はない。


ただ、線のように切れている。


「待て!」


距離を取りながら叫ぶ。


「俺は何をした!」


「なぜ俺が反逆者なんだ!」


白い先兵は止まらない。


一歩。


また一歩。


歩いているようで、実際には“距離の概念を詰めている”ような動き。


音が遅れてついてくる。


「回答。」


「不要。」


感情のない声。


ベスは息を吐く。


(会話じゃない……)


その時。


「ベス!」


後方から声。


ガルド達が動く。


理由は分からない。


だが、目の前で仲間が狙われている。


それだけで十分だった。


ガルドが剣を抜く。


レオンが大剣を構える。


アイラが弓を引く。


リシアが前へ出る。


エインが大弓を構える。


ボルグが大楯を持ち上げる。


その瞬間。


三人のうち一人が、静かに前へ出た。


白い翼がわずかに揺れる。


「……」


道を塞ぐ。


その立ち方は“構え”ではない。


ただそこに立つことで、進行方向そのものを消している。


「妨害を確認。」


静かな声。


ガルドは剣を握り直す。


「ベスに何をするつもりだ」


問いかける。


だが返答はない。


代わりに、白い剣が持ち上がる。


キィン――。


その音に、ガルドの目が細まる。


(……軽い)


虚無の使徒の音とは違う。


あれは“破壊の重さ”だった。


だがこれは違う。


音だけが綺麗で、実体がない。


なのに――触れれば死ぬ。


白い羽が舞う。


神の先兵は、ようやく動いた。


だがその動きは「攻撃」ではない。


最短距離で、ガルドの“次の行動”を潰すための一手だった。


戦いはまだ始まっていない。


















それでもすでに、逃げ道だけが消されていく。

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