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バル  作者: 隣の猫
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378/406

ブラック



「散れ。」


低い声が落ちた瞬間、空気が“割れた”。


九人の虚無の使徒が同時に地を蹴る。


ドンッ!!


石畳が砕け、破片が跳ね上がる。


風圧が一気に押し寄せ、ベスの髪が後ろへ引き裂かれるように流れた。


「速い……!」


そう認識した時には、もう目の前だった。


「ベス!」


ガルドの叫びが遅れて届く。


ベスは剣を抜き放つ。


キィィン……!


刀身に淡い光が走る。


空気が震える。


魔を払う光。


発動――


「遅い。」


視界の中で、影が“消えた”。


次の瞬間。


ガンッ!!


衝撃。


剣が真正面から叩き潰されるように受け止められる。


火花が爆ぜ、金属音が耳を裂く。


「ぐっ……!」


腕に重さが落ちる。


骨ごと押し潰されるような圧力。


足元の石畳がミシミシと軋み、ベスの踵が数センチ滑った。


(重い……!)


その背後。


空気が“裂ける音”。


ヒュッ――


「っ!」


反射で身を捻る。


ギィン!!


もう一人の剣が、肩すれすれを削り取るように通過した。


風圧だけで頬が裂けるように熱い。


「させるか!!」


レオンが割り込む。


ドゴォン!!


大剣が地面を叩きつけ、衝撃波のような風が広がる。


ギィィン!!


金属同士が噛み合う悲鳴。


火花が散り、レオンの腕が大きく弾かれる。


「くそっ……重い!!」


その瞬間。


ヒュンッ!!


空気が“刺さる”。


黒い短剣。


音もなく、ただ“殺意だけ”が飛んでくる。


「レオン!!」


アイラの声。


次の瞬間。


ビュンッ!!


風が“矢の形”を取って走った。


短剣と矢が空中で激突。


キィィンッ!!


金属音ではない、空気が裂けるような高い破裂音。


短剣が軌道を逸れ、石壁に突き刺さる。


ズガァン!!


壁が抉れ、粉塵が爆発するように広がった。


「まだ来る!」


アイラが息を飲む。


使徒は止まらない。


片手で瓦礫を掴む。


ゴゴゴ……!!


石が悲鳴を上げるように持ち上がる。


「潰れろ。」


低い声と同時に投げ放たれる。


空気が“唸る”。


「アイラ!!」


ドォン!!


リシアが両手を突き出す。


氷が一瞬で広がる。


バキバキバキッ!!


巨大な瓦礫が氷壁に激突し、粉々に砕け散る。


氷片と石片が雨のように降り注ぐ。


「今!」


その瞬間。


二つの影。


左右から同時に迫る。


上段と下段。


逃げ道を“潰す動き”。


「来る……!」


リシアの息が詰まる。


その刹那。


ガルドが踏み込んだ。


ドンッ!!


地面が爆ぜる。


キィィン!!


一閃。


二つの剣が同時に弾かれ、火花が空中に散る。


「下がれ!!」


「はいっ!!」


リシアが氷を蹴って後退する。


だが。


空気が重い。


終わらない。


「……っ」


ベスの呼吸が乱れる。


視界の端で、吹き飛ばされた使徒が立ち上がる。


石を踏み砕く音。


ゴリッ……ゴリッ……


まるで何もなかったかのように。


「……化け物かよ」


レオンが低く吐き捨てる。


その瞬間だった。


九人の視線が。


一斉にベスへ“刺さる”。


空気が凍る。


「フェンリルの継承者」


「盟主様の命」


「生かして連れて行く」


その言葉と同時に。


九つの殺意が一斉に収束する。


空気が“圧縮”される。


次の瞬間。


九人が同時に踏み込んだ。


ドンッッ!!!


地面が爆発したように砕ける。




















風圧がベスの身体を押し潰すように襲いかかった。

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