スミス
ガルドは街の一角で足を止めた。
焼け焦げた建物の中。
半分崩れた煙突から、細い煙が立ち上っている。
「……まだ火は生きてるな。」
ガルドは小さく呟き、扉を開けた。
カラン――。
鈴の音が鳴る。
店の奥から、鉄を打つ音が止んだ。
「……。」
大柄な男が姿を現す。
ガルドを見る。
数秒の沈黙。
「生きてたか。」
「ああ。」
それだけだった。
男は鼻を鳴らす。
「相変わらず、しぶてぇ野郎だ。」
「お前もな。」
短いやり取り。
それだけで十分だった。
男は炉へ鉄を戻す。
火花が散る。
「街の様子は見たか。」
「ああ。」
ガルドは短く答える。
男は槌を握ったまま続けた。
「黒い連中が来た。」
「家を焼き、人を襲い、好き放題だった。」
ガンッ。
槌の音が響く。
「だが、途中で様子が変わった。」
「急に街そのものには興味をなくしたみてぇでな。」
「石畳を壊し始めた。」
ベスが顔を上げる。
「石畳を?」
「ああ。」
男は頷く。
「何かを探してた。」
「街中を歩き回っては地面を叩き、壊して……。」
「やがて、一か所で手を止めた。」
ガンッ。
「地下水路だ。」
店の中が静まり返る。
「地下水路?」
レオンが聞き返す。
「大昔からある。」
「この街に水を引くための古い水路だ。」
「俺たちも入口くらいしか知らねぇ。」
「どこまで続いてるのか。」
「何があるのか。」
「誰も知らん。」
男は肩をすくめる。
「街の古いもんだからな。」
「子どもの頃から、近づくなって言われて育った。」
「黒い連中は、その地下へ入ろうとしていた。」
「その時だ。」
男は炉の火を見つめる。
「空から白い奴らが降りてきた。」
「黒い連中だけを相手に暴れ始めてな。」
「地下へ向かう奴らを止めて、そのまま追い払っちまった。」
「街の連中は助かった。」
「だが……。」
男は苦笑する。
「結局、あの地下に何があるのかは、誰にも分からねぇままだ。」
ガルドは静かに目を閉じる。
「……地下水路か。」
ベスも焼けた街の先を見る。
虚無の使徒が探していた場所。
そして。
白い者たちが守ろうとした場所。
その答えは。
街の地下に眠っていた。




