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バル  作者: 隣の猫
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フロート




夜の港。


グリムファングの甲板に、静かな時間が流れていた。


昼間まで響いていた笑い声は消え。


今は波の音だけが聞こえる。


エインとボルグは、並んで海を見ていた。


その表情は。


再会を喜ぶものではなかった。


ガルドが口を開く。


「……中央島で何があった。」


エインはしばらく黙っていた。


そして。


ゆっくりと口を開く。


「俺たちは、あの後も中央島に残った。」


ベスは黙って聞いていた。


「王国軍の新兵を育てながらな。」


エインの視線が遠くを見る。


「最初は、何も変わらなかった。」


「いつもの中央島だった。」


「だが……。」


風が吹く。


船の帆が小さく揺れる。


「ある日を境に。」


「全部が変わった。」


レオンが眉を寄せる。


「何が……?」


エインはすぐには答えなかった。


ただ。


隣にいるボルグを見る。


ボルグも静かに頷いた。


「俺たちにも、何が起きているのか分からなかった。」


「ただ……。」


「今までとは違う。」


その言葉だけで。


空気が重くなる。




「そんな時だった。」


エインが続ける。


「一人の少女が現れた。」


ベスの表情が変わる。


「……少女?」


「ああ。」


エインは頷く。


「ユナという名前だった。」


その名前を聞いた瞬間。


ベスの中に地下神殿での記憶が蘇る。


静かな声。


不器用な言葉。


最後に残された言葉。


『神を信じて』


ベスは何も言わない。


ただ。


拳を少しだけ握る。




「ユナは俺たちに言った。」


「お前たちのことを。」


エインの視線がベスへ向く。


「ベス。」


「お前たちが何をしているのか。」


「何を探しているのか。」


「全部ではない。」


「でも、伝えられることを伝えてくれた。」


静かな甲板。


誰も口を挟まない。




「そして。」


エインは港に停まっている船を見る。


傷だらけの中型船。


「この船を見つけた。」


「正直、まともに動くとは思わなかった。」


ボルグが苦笑する。


「何度、海に沈むと思ったか分からん。」


レオンが船を見る。


「よくここまで来たな……。」


「本当にな。」


エインは小さく笑う。


「だが。」


その笑みはすぐ消える。


「ユナが言った。」


「ここを出ろ、と。」


「急げ、と。」




ガルドが静かに聞く。


「中央島は……。」


エインは目を伏せる。


「変わった。」


「俺たちが知っている場所じゃなくなった。」


波が船体を叩く。


「そして。」


エインは空を見る。


「あの日。」






















「中央島は…空に浮かんだ…。」

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