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バル  作者: 隣の猫
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367/397

シー




港に、木槌の音が響いていた。


カン。


カン。


波の音に混じって、最後の作業音が消えていく。


グリムファング。


傷だらけになった船は、それでも再び海へ出られる姿になっていた。


新しい板。


張り直された縄。


修復された帆。


完全に元通りではない。


けれど。


ここまで一緒に進んできた船だった。


ベスは海を見る。


潮の香り。


風の音。


久しぶりの感覚だった。


「また……行くんだな。」


小さな呟き。


隣でノアが海を見る。


「次は……どこへ行くの?」


その言葉に。


全員の視線が集まった。




大きく広げられた地図。


そこには、大樹の神殿で刻まれた印が残されている。


残された光。


それを探すための道。


アイラが指で印をなぞる。


「ここ。」


「大樹の神殿で分かった場所。」


東。


西。


北。


そして。


まだ知らない場所。


「どこから向かうか……。」


レオンが腕を組む。


「全部行くんだろ?」


灰猫が尻尾を揺らす。


「そう簡単な話ではないぞ。」


「光を探すだけではない。」


誰も言葉を返さない。


地図の上にある印。


その先に何が待っているのか。


全員が分かっていた。


ベスは静かに地図を見る。


次の場所。


次の戦い。


その先へ進むために。




その時。


港にいた団員の一人が声を上げた。


「……あれは何だ?」


全員が振り返る。


遠くの海。


小さな船影が見える。


だが。


近づくほどに分かる。


帆は裂けている。


船体には大きな傷。


波に揺られながら、なんとか進んでいる。


「……あの船。」


ガルドが目を細める。


やがて。


ボロボロの中型船が港へ入ってきた。


甲板から二人が姿を現す。


「……久しぶりだな。」


エイン。


そして。


ボルグ。


「エイン!」


レオンが声を上げる。


二人は疲れた表情を浮かべながらも笑った。


「元気そうで何よりだ。」


「そっちは……ずいぶん派手になったな。」


ボルグの視線が止まる。


その先。


ガルド。


以前とは違う姿。


纏う空気。


立つ姿。


少しの沈黙。


そして。


ボルグが笑った。


「……おい。」


「なんだ。」


「かっこよくなったな。」


ガルドが眉を寄せる。


「は?」


次の瞬間。


ボルグはガルドの背中を叩いた。


「ははは!」


「昔より団長らしいじゃないか!」


「痛い。」


ガルドが小さく呟く。


エインも口元を緩める。


「確かにな。」


「前のお前とは少し違う。」


ガルドは返事をしない。


ただ。


少しだけ視線を逸らした。




再会の空気が落ち着いた頃。


ボルグの表情が変わる。


「……悪い。」


「本当は、こんな話をしに来たわけじゃない。」


ガルドが顔を上げる。


「何があった。」


ボルグは海を見る。


そして。


低い声で告げた。


「中央島が……。」


風が吹く。


甲板の地図が揺れる。


残された光を探す旅。


その始まりの日。


世界の異変が、


すぐそこまで迫っていた。

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