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バル  作者: 隣の猫
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グリム



村を後にした四人は、


海沿いの道を歩いていた。


潮の香りが強くなる。


やがて。


難破したグリムファングが姿を現した。


船体は大きく傾き、


砂浜へ乗り上げている。


折れた帆柱。


裂けた帆。


それでも。


船はそこにあった。


「……待っててくれたんだな。」


ベスが小さく呟く。


レオンたちと共に戦い、


ここまで戻ってくる。


その約束を守るように、


グリムファングは静かに海を見つめていた。


アイラは船を見上げる。


「思ったより壊れてない。」


船体を一周しながら確認する。


「これなら港まで運べれば直せる。」


ベスも頷く。


「あとは……。」


アイラは空を見上げた。


青空。


ゆっくりと流れる雲。


「父鷹さんが言ってた。」


「風の矢を空へ放てば来てくれるって。」


ベスが笑う。


「ああ。」


「頼んだ。」


アイラも小さく笑った。


「じゃあ。」


弓を握る。


「派手に行くよ。」


ゆっくりと弦を引く。


風が集まる。


海風。


森を抜ける風。


空を流れる風。


すべてが、


一本の矢へ集まっていく。


ノアの髪が揺れる。


灰猫が静かに目を細めた。


「見事じゃ。」


次の瞬間。


弦が鳴る。


――バシュッ!!


放たれた風の矢は、


一直線に空へ駆け上がった。


白い軌跡。


雲を貫き、


空の彼方まで伸びていく。


しばらく静寂が続く。


波の音だけが響く。


その時だった。


遠い空。


小さな影が三つ現れる。


「来た。」


アイラが微笑む。


影はみるみる大きくなる。


黄金の翼。


父鷹。


母鷹。


そして。


元気よく先頭を飛ぶ小鷹。


「待たせたな。」


父鷹が静かに舞い降りる。


母鷹は船体を見て、


少し困ったように笑った。


「これは大仕事ですね。」


小鷹は嬉しそうに船の周りを飛び回る。


「任せて!」


三羽は息を合わせる。


巨大な鉤爪が船体を掴む。


「しっかり捕まっておれ。」


父鷹の声。


ベスたちは船へ飛び乗る。


ノアは巫女服を大切に抱えたまま、


そっと甲板へ腰を下ろした。


「行くぞ。」


黄金の翼が大きく広がる。


次の瞬間。


グリムファングが、


ゆっくりと砂浜を離れた。


海風を受けながら、


船は空へと持ち上がる。


港へ向かって。


帰るための翼が、


静かに羽ばたいていた。

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