ティーチング
夜は静かだった。
焚き火の火は小さくなり、
灰鷹の団員たちは眠りについている。
戦いの疲れが、
ようやく身体へ追いついたような夜だった。
ベスも眠っていた。
その時。
「……ベス。」
小さな声が聞こえた。
目を開ける。
目の前に、
ノアが立っていた。
「どうした?」
ノアは答えない。
ただ、
大樹の方を見ている。
いつもの柔らかな表情ではなく、
何かを確かめるような顔だった。
「……光。」
小さく呟く。
ベスは身体を起こす。
「光?」
ノアは頷く。
「見える。」
その言葉に、
ベスも立ち上がった。
少し離れた場所。
灰猫が片目を開ける。
ベスを見る。
ノアを見る。
そして。
小さく欠伸をすると、
また丸くなった。
二人は、
静かに歩き出す。
昼間とは違う静けさ。
木々の間を抜ける風。
足元に落ちる月明かり。
その奥で。
大樹だけが、
淡い光を纏っていた。
「……。」
ベスは足を止める。
昼間見た時とは違う。
巨大な幹の内側。
わずかに光が流れている。
まるで、
大樹の奥深くから何かが漏れているようだった。
ノアが手を伸ばす。
触れることはできない。
だが。
光は、
ノアの動きに反応するように揺れた。
「こっち。」
二人はさらに奥へ進む。
普段なら壁のはずの場所。
そこに、
細い光の筋が走る。
次の瞬間。
大樹の幹が、
低い音を立てた。
ゴゴゴゴ……。
石でもない。
木でもない。
長い年月眠っていた何かが、
動き出す音。
幹の一部がゆっくりと開いていく。
その奥。
古い扉が現れた。
ベスは息を呑む。
「……隠されていたのか。」
ノアは扉を見る。
「ここ。」
「光がある。」
扉には、
見たことのない古い紋様が刻まれていた。
何を表しているのか。
ベスには分からない。
ただ。
長い時間を越えて、
誰かが残したものだということだけは分かった。
ベスが手を伸ばす。
触れた瞬間。
扉の紋様が淡く光る。
音もなく。
ゆっくりと。
扉が開いた。
その先には、
暗い空間が広がっていた。
しかし。
奥から。
確かに光が流れている。
ノアが小さく息を呑む。
「……ある。」
「何が?」
ノアは答えない。
ただ、
奥を見つめていた。
ベスも剣へ手を添える。
警戒しながら、
一歩踏み出す。
大樹の奥。
そこに隠されていたものへ。
二人は進んでいった。




