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バル  作者: 隣の猫
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358/398

ディープ



風が吹いていた。


大樹の神殿前。


黒い霧は、


森の奥へ流れていく。


戦場を覆っていた闇は、


少しずつ消えていた。


残っているのは、


砕けた地面。


折れた木々。


そして、


戦いの跡だけだった。


ベスは、


静かに剣を下ろす。


刀身に残っていた淡い光が、


ゆっくりと消えていく。


しばらく。


誰も言葉を発しなかった。


長い戦いだった。


だが。


終わった。


「ベス。」


声がする。


振り返る。


ガルドだった。


その後ろには、


灰鷹の仲間たち。


傷を負った者。


疲れ切った者。


それでも。


全員が立っていた。


誰一人欠けていない。


「負傷者は。」


ガルドが確認する。


「数名います。」


団員が答える。


「ですが、動けます。」


ガルドは小さく頷く。


「そうか。」


短い返事。


それだけだった。


だが。


その表情には、


確かな安堵があった。





「ノア。」


呼ばれて、


ノアが振り返る。


「こっち見せて。」


小さな身体で、


傷ついた団員の元へ向かう。


手を添える。


淡い光が広がる。


傷が少しずつ塞がっていく。


「ありがとう。」


「ううん。」


ノアは首を振る。


「みんな帰ってきたから。」


その言葉に、


団員たちは少し笑った。


戦いの後。


疲れは残っている。


それでも。


灰鷹の空気は、


少しずつ戻っていた。


レオンが肩を回す。


「いやぁ……さすがに疲れたな。」


「珍しいね。」


アイラが返す。


「俺だって疲れる時くらいあるって。」


「へぇ。」


「その反応やめろよ。」


小さな笑いが起こる。


ベスは、


その様子を見ていた。


戦うためだけではない。


帰る場所がある。


共に歩く仲間がいる。


それを、


改めて感じていた。





「大樹の神殿を確認する。」


ガルドが言う。


「虚無の使徒が狙った場所だ。」


「あれだけの戦いの後だ。」


「何もないとは思わない方がいい。」


灰鷹の団員たちが頷く。


目的は一つ。


神殿の状態を確認する。


そして。


今夜の休める場所を確保すること。


戦いの直後。


全員に休息が必要だった。


ベスは、


巨大な樹を見上げる。


空を覆うほどの大樹。


森の中心に立つ、


古い神殿。


「行こう。」


ガルドが歩き出す。


灰鷹も続く。


戦場を後にして。


静かな森の奥へ。




















大樹の神殿へ向かって。

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