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バル  作者: 隣の猫
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357/400

サンク



森が静まる。


倒れた木々。


砕けた枝。


黒い霧が漂う中で、


二人の間には広い空間が生まれていた。


もう、


幹部が使える支点はない。


ベスは剣を構える。


幹部もまた、


黒い霧を纏った拳を握る。


互いに動かない。


一瞬。


風だけが通り過ぎる。


そして。


先に動いたのは、


ベスだった。


地面を蹴り、光が残る。


銀色の前脚が、


大きく振り抜かれる。


フェンリル。


爪が空気を裂く。


一本。


二本。


三本。


銀色の衝撃波が、


幹部の周囲へ走った。


正面。


左右。


背後。


逃げ道を塞ぐように、


爪の軌跡が残る。


その瞬間。


ベスの姿が消えた。


速い。


視界から消える。


気配が遠ざかる。


幹部は動かなかった。


見ていた。


盟主との戦い。


あの時のベス。


爪の軌跡。


空間を駆ける動き。


そして。


その技には、


一つだけ穴があった。


ベスがいた場所。


そこだけは、


爪の軌跡が届かない。


幹部は迷わない。


黒い霧を纏う。


一直線。


ベスが消えた場所へ駆ける。


そう判断した。


正しい判断だった。


だからこそ。


一歩。


踏み込む。


その瞬間。


ズァッ!!


地面から銀色の爪が走った。


「……!」


隠されていた一撃。


ベスが最後に残していた爪の軌跡。


足元を取られる。


身体が崩れる。


幹部は受け身を取る。


地面へ落ちる直前。


反射的に顔を上げた。


その先。


空。


白銀の光。


ベスがいた。


フェンリルの力で跳び上がった身体。


継承者の剣を両手で握る。


そこへ。


蒼白い光が集まっていく。


魔を払う光。


幹部の目が細まる。


黒い霧が集まる。


闇。


盟主から与えられた力。


黒い壁が、


ベスの剣を迎え撃つ。


ギィィィン!!


光と闇がぶつかる。


一瞬。


止まった。


だが。


黒い霧は震えていた。


戦いの中で。


何度も光に触れた。


何度も削られた。


最初なら、


弾けたはずの闇。


今は。


耐えているだけだった。


ベスは押し込む。


フェンリルの爪。


剣。


光。


全てを重ねる。


闇が裂ける。


黒い霧が消えていく。


そして。


ズァァッ!!


継承者の剣が、


幹部を貫いた。


静寂。


森に風が戻る。


幹部は、


自分を貫く剣を見下ろす。


黒い霧は、


もう形を作らない。


「……。」


その目に、


初めて僅かな理解が浮かぶ。


知っていた。


この力を。


この戦い方を。


だが。


知らなかった。


ここまで変わっていたことを。


ベスは剣を抜く。


幹部の身体が、


ゆっくりと崩れる。


大樹の神殿前。


黒い霧を纏った最後の壁が、


















風と共に静かに消えた。

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