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バル  作者: 隣の猫
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356/397

キャトル



銀の刃が、


木々の間を駆け抜ける。


ズァッ!!


幹部は身を沈める。


刃が頭上を掠め、


背後の幹へ深く食い込んだ。


そのまま木へ手を伸ばす。


掴む。


身体が弧を描く。


だが。


ベスはもう追っていた。


振り向かない。


幹部が向かう先へ走る。


「……!」


幹部の目が細まる。


ベスは剣を振るう。


狙いは幹部ではない。


ズドッ!!


刃が木の幹へ突き刺さる。


太い幹が軋み、


ゆっくりと傾き始める。


逃げ道が一本消える。


幹部は別の木へ飛ぶ。


その木も。


ベスは踏み込みながら斬り裂いた。


乾いた破裂音。


枝葉が一斉に舞い、


森の景色が崩れていく。


幹部は止まらない。


木を蹴る。


枝を掴む。


その度に。


一本。


また一本と。


ベスが支点を潰していく。


「……。」


初めて。


幹部が地面へ降りた。


黒い霧が揺れる。


ベスは剣を構える。


ようやく。


土俵が同じになる。


幹部が拳を握る。


踏み込む。


真正面。


ガギィィィン!!


剣と黒い小手が激しくぶつかる。


衝撃が地面を抉る。


幹部は押し込む。


ベスは押し返さない。


力を受け流す。


僅かに身体を開く。


幹部の重心が流れる。


その瞬間。


銀色の前脚。


フェンリル。


横薙ぎ。


轟ッ!!


幹部は咄嗟に腕を交差させる。


黒い霧が弾ける。


身体が大きく滑った。


靴底が土を削る。


止まる。


距離が開く。


ベスは追わない。


ただ。


剣を下げなかった。


幹部も動かない。


互いに見据える。


森は、もう息をしていなかった。


折れた枝が地に沈み、


倒れた幹が影を落とす。


音だけが、遅れて消えていく。


風が一度だけ通り抜けた。


黒い霧が揺れた。


その揺れは、すぐに静まる。


ベスは剣を握り直す。


幹部は、わずかに腕を下ろしたまま動かない。


沈黙。
















ただ、視線だけが交差していた。

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