表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バル  作者: 隣の猫
PR
352/398

ミリアド




大樹の神殿前。


戦場はまだ終わっていなかった。


黒い霧。


魔物の群れ。


崩れた大地。


虚無の使徒との戦いとは別に、


もう一つの戦いが続いている。


「左から来るぞ!」


「盾を前へ!」


「後ろの負傷者を下げろ!」


灰鷹の団員たちは、


それぞれの判断で動いていた。


以前なら。


ガルドが全てを見ていた。


危険な場所へ自分が向かい。


仲間が傷つく前に止める。


それが、


自分の役目だと思っていた。


だが。


今は違う。


「第三班、前へ!」


「第二班はノアの周囲を頼む!」


「無理に倒すな、時間を稼げ!」


団員たちの声が響く。


ガルドは剣を構えながら、


その動きを見ていた。


迷いがない。


自分たちで考え、


自分たちで戦っている。


「……」


少しだけ。


口元が緩む。


その時。


「ガルド!」


一人の団員が叫ぶ。


巨大な魔物が、


前線を突破していた。


ガルドは踏み込む。


一撃。


迫った爪を弾き、


魔物の動きを止める。


だが。


そこへ別の団員が入った。


「任せてください!」


槍が走る。


魔物の足を貫く。


続けて、


別の団員が剣を振るう。


魔物が崩れ落ちる。


ガルドは一瞬だけ目を細めた。


昔なら。


ここで自分が最後まで倒していた。


今は。


違う。


「……成長したな」


小さく呟く。






「ノア!」


「こっち!」


声が響く。


ノアが走る。


傷ついた団員の元へ。


膝をつき、


両手を添える。


淡い光。


荒かった呼吸が、


少しずつ落ち着いていく。


「ありがとう」


「まだ動ける。」


「無理しないでね」


ノアは笑う。


そして。


すぐに顔を上げる。


「次は?」


その横を、


灰猫が歩く。


「右じゃ」


「次に傷を負う者がおる」


「うん!」


ノアはまた駆け出す。


地下神殿の時と同じ。


小さな身体で、


戦場を走り続ける。


だが。


あの時とは違う。


ノアはもう、


自分が何をするべきか分かっている。


灰猫も、


ただ守るためではなく、


隣で導いている。


その姿を見て。


ガルドは思う。


守っているつもりだった。


だが。


本当は。


この者たちは、


自分の翼で飛び始めていた。


――。


遠く。


風が変わる。


黒い霧が一瞬だけ薄れる。


ガルドは視線を上げる。


レオン達。


終わったのだろう。


あいつらも。


もう、自分が守るだけの存在ではない。


「……」


ガルドは前を見る。


まだ魔物は残っている。


まだ守るべきものはある。


だから。


行く。


昔のように、


全てを背負うためではない。


共に飛ぶために。


「灰鷹!」


声が響く。


その一声に、空気が震えた。


「まだ終わっていないぞ!」


団員たちが応える。


「「「はい!!」」」


その瞬間。


誰か一人の声ではなくなった。


剣の音。


足音。


呼吸。


すべてが重なり合い、


一つのうねりとなって戦場へ広がっていく。


ガルドは剣を握り直す。


その背に、確かな熱が集まっていくのを感じた。


一人ではない。


もう、誰も一人ではない。


灰鷹は。


一つの翼ではなく。
















 

無数の翼で空を進む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ