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バル  作者: 隣の猫
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351/397

ストライク




黒い霧が揺れる。


四人の虚無の使徒が、


同時に動いた。


一人ではない。


二人でもない。


四人。


それぞれの攻撃が、


互いの隙を埋める。


投げナイフ。


正面から迫る剣。


リシアへ向かう大槌。


死角へ回る短剣。


単純な攻撃ではない。


相手を倒すためではなく。


互いを生かすための動き。


「……連携か」


レオンが呟く。


一瞬。


地下神殿で戦った時を思い出す。


虚無の使徒は、


個の力だけではない。


仲間と繋がることで、


さらに強くなる。


だが。


今の灰鷹も同じだった。


「アイラ」


リシアが呼ぶ。


「分かってる」


風が鳴る。


アイラは目を細める。


見るのは敵ではない。


戦場全体。


風の流れ。


黒い霧の動き。


次の一手。


「レオン、三歩下がって」


「了解」


迷いがない。


レオンは言われた通り動く。


その瞬間。


大剣のあった場所を、


黒い刃が通り抜けた。


「リシア」


「うん」


氷が広がる。


敵の足元。


動きを止めるためではない。


次の動きを限定するため。


逃げる場所を奪う。


そこへ。


アイラの矢が走る。


風を纏った矢。


投げナイフの軌道を変える。


敵の連携が、


一瞬だけ崩れた。


「今」


レオンが踏み込む。


大剣。


正面から受ける。


押し込む。


だが。


敵も止まらない。


四人の力が重なる。


黒い霧が膨れ上がる。


「まだ来るか」


レオンが笑う。


なら。


こちらも。


三人の動きが重なる。


レオンが敵を止める。


リシアが戦場を作る。


アイラが未来を読む。


一人の力ではない。


三人だからできる動き。


地下神殿で。


それぞれが限界を越えた。


虚無の使徒には届いた。


しかし。


あの先にいた存在には、


何もできなかった。


だから。


今ここで。


自分たちの歩みを証明する。


「行くよ」


アイラの声。


「合わせて」


リシアが続く。


「任せろ」


レオンが笑う。


その瞬間だった。


黒い霧が“呼吸”するように膨れ上がる。


四人の虚無の使徒が、


最後の連携を完成させる。


逃げ道はない。


視界もない。


音すら飲み込まれる。


――それでも。


レオンは一歩、前へ出た。


「見えてる」


アイラが呟く。


風が、裂け目を見つける。


ほんの一瞬の“歪み”。


リシアがそこへ氷を置く。


未来の軌道を固定するように。


「そこだよ」


短く。


そして。


レオンが踏み込む。


大剣を振り上げるのではない。


“落とす”。


全ての重さを、


その一点に。


風が押す。


氷が支える。


剣が貫く。


三つが重なった瞬間、


音が消えた。


次の瞬間。


黒い霧の中心に、


白い線が走る。


それは裂け目ではなく、


“終わり”そのものだった。


四人の虚無の使徒が、


声を上げる間もなく崩れる。


霧がほどけるように散り、


武器だけが地に落ちる。


静寂。


風だけが戻ってくる。


レオンは剣を下ろさないまま、


その場に立っていた。


リシアも、


アイラも、


すぐには動かない。


勝った実感より先に、


確かめていた。


――本当に、越えたのか。


やがてレオンが息を吐く。


「……今のは、悪くないな」


リシアが小さく笑う。


「うん。ちゃんと届いた」


アイラは空を見上げる。


風が、静かに流れている。


「次も、いけるね」


誰に向けた言葉かは、もう分からない。


ただ一つだけ確かなのは、


三人の間にあった距離が、


また少しだけ縮まったということだった。


灰鷹は、





















確かに前へ進んでいた。

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