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バル  作者: 隣の猫
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350/431

バード




黒い霧が広がる。


四人の虚無の使徒が、


同時に動いた。


一人は剣。


一人は短剣。


一人は投げナイフ。


一人は大槌。


それぞれの攻撃が、


別々の角度から迫る。


以前なら。


一つ一つを防ぐだけで精一杯だった。


だが。


今は違う。


「右」


アイラの声。


レオンは迷わず動く。


飛んできた投げナイフを、


大剣で弾く。


その瞬間。


黒い刃が横から迫る。


リシアの氷が地面から伸びた。


刃の軌道が僅かにずれる。


そこへ。


レオンの剣が入る。


「助かる」


「こっちも助かったよ」


短い言葉。


それだけで通じる。


四人の虚無の使徒は、


僅かに距離を取った。


だがそれは、


退いたのではない。


“組み直した”だけだ。


黒い霧が、呼吸するように揺れる。


次の瞬間が来る。


それを全員が理解していた。


アイラは弓を引く。


見るのは敵ではない。


風。


黒い霧の流れ。


次に起こる動き。


「来る」


その言葉が落ちた瞬間、


空気が“重く”なった。


投げナイフが放たれる。


だが。


アイラには見えていた。


風が教えてくれる。


刃が通る道。


避ける場所。


そして。


敵が次に動く場所。


「そこ」


矢が放たれる。


投げナイフの使徒の足元。


逃げ道を塞ぐ。


その一瞬。


リシアが踏み込む。


銀氷華。


二本の氷剣が舞う。


攻撃ではない。


殺すための刃ではなく、


“選択肢を奪うための氷”。


足元。


腕。


視線。


すべてを少しずつずらしていく。


逃げるという選択だけを、


静かに削っていく。


そこへ。


レオンが入る。


大剣。


正面から。


受ける。


押す。


崩す。


「まだだ」


虚無の使徒が黒い霧を噴き出す。


力で押し返す。


だが。


レオンは止まらない。


地下神殿で。


何度も失敗した。


力だけでは届かない。


だから。


今は違う。


仲間が作った一瞬を、


自分が使う。


大剣が黒い刃を弾く。


風が走る。


氷が広がる。


矢が道を作る。


三つの力が、


一つの攻撃になる。


虚無の使徒たちが後退する。


初めて。


灰鷹が、


押していた。


「……」


レオンは前を見る。


まだ終わっていない。


だが。


確かな手応えがある。


盟主の前で感じた絶望とは違う。


届かないと思った距離が。


今は。


少しずつ縮まっている。


黒い霧が大きく揺れる。


四人の虚無の使徒が、


最後の動きを見せる。


“殺すため”ではない。


“終わらせるため”の動き。


空気が一段、冷える。


音が消える。


呼吸だけが残る。


レオンは剣を構える。


リシアが氷を纏う。


アイラが弦を引く。


誰も言葉を発さない。


必要がない。


次の一撃で。
















終わらせる。

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