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バル  作者: 隣の猫
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349/398

サード



風が止む。


黒い霧が薄れる。


大槌の使徒は、ゆっくりと立ち上がった。


まだ倒れてはいない。


だが、先ほどまでとは違う。


レオンの一撃が「届く」という事実だけは、確かに刻まれていた。


「……厄介。」


虚無の使徒が呟く。


その声を聞いた瞬間、レオンは状況を切り分ける。


(まだ終わってない。崩し切れていない)


大剣を握り直し、前線を維持する構えに戻る。


「こっちも同じこと思ってるよ」


その言葉は挑発ではなく、戦況の認識だった。


その横で、空気が変わる。


銀色の氷が舞う。


リシアが一歩前へ出た。


彼女の視線はレオンではなく、戦場全体に向いている。


大槌の使徒の再起動。


黒い霧の再収束。


そして、次に来る攻撃の“起点”。


(ここで止めないと、押し返される)


判断は一瞬。


二本の氷剣──銀氷華を構える。


「レオン」


「分かってる」


短い応答で、役割が確定する。


レオンは前線維持。


リシアは中距離制圧と迎撃。


その瞬間。


上空から風が割り込む。


一本の矢が黒い霧の“流れ”そのものを貫いた。


アイラ。


彼女は戦場を「点」ではなく「流れ」で見ている。


敵の位置ではなく、動きの方向。


味方の位置ではなく、崩れそうな線。


(右が空く。そこが崩点)


即座に判断。


「右」


その一言で、戦術が確定する。


レオンとリシアは同時に動いた。


理由は違う。


だが、判断は同じ。


レオンは「押し込まれる前に受ける位置」。


リシアは「崩点を塞ぐ氷の壁」。


迫る黒い刃。


レオンの大剣が正面で受け止める。


衝撃を“止める”のではなく、“流す”。


その横で、リシアの氷が地面ごと道を封鎖する。


逃げ道を消すのではない。


敵の動線そのものを変える。


そこへ、アイラの矢が再び走る。


黒い霧の“次の動き”を先に潰す射線。


三人の役割は明確だった。



* レオン:前線で力を受け止め、戦線を崩さない「壁」


* リシア:中距離で流れを止め、戦場を整える「制御」


* アイラ:上空から流れを読み、次の動きを潰す「指揮」


誰か一人が戦っているのではない。


三人で「戦場そのもの」を扱っている。


地下神殿では届かなかった。


盟主の前では何もできなかった…。


だが今は違う。


一人の力ではなく、三つの判断が一つの戦術になっている。


黒い霧が再び膨らむ。


虚無の使徒たちが動く。


「来るぞ」


レオンが言う。


その声に、迷いはない。


リシアは氷剣を構え直し、戦場の“次の崩れ”を見ている。


アイラはすでに次の射線を引いている。


三人の視線は、同じ一点へ収束する。


灰鷹は、今や一人ではない。


三つの判断が重なり、
























一つの翼として戦場を切り裂いていた。

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