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黒い霧が、
大樹の神殿前を覆っていく。
森の奥から、
無数の魔物が姿を現した。
大地が震える。
空を埋める翼。
地を駆ける獣。
以前なら、
足が止まっていた光景。
しかし。
灰鷹は動じなかった。
「迎え撃て!!」
ガルドの声が響く。
団員たちが一斉に動く。
剣が振るわれる。
槍が突き出される。
魔物の群れへ、
灰鷹が真正面からぶつかった。
その中で。
ベスは剣を振るいながら、
一度だけ前を見る。
神殿前。
そこに立つ黒い外套。
虚無の使徒幹部。
ガルドと視線が交わる。
一瞬。
ただ、それだけ。
ガルドが小さく頷く。
ベスも僅かに返す。
言葉はいらない。
ベスは、
自分が止める。
ガルドは、
仲間を守る。
それだけだった。
「行くぞ。」
ガルドは剣を抜く。
灰鷹と共に、
魔物の群れへ向かっていく。
「ノアは下がってて。」
リシアが静かに言う。
ノアは頷き、
リシアの後ろへ下がる。
灰猫も、
その隣を歩く。
魔物が迫る。
しかし。
灰鷹の団員たちがすぐに前へ出る。
「大丈夫です!」
「こちらは任せてください!」
ノアは頷き、
負傷した団員へ駆け寄る。
優しい光が、
傷を癒やしていく。
リシアはその姿を確認しながら、
周囲を見渡した。
まだ動かない。
虚無の使徒たちは、
ただこちらを見ている。
まるで、
何かを待っているように。
ベスは魔物を斬り伏せる。
一体。
また一体。
だが、
視線だけは外さない。
幹部。
その存在だけを、
常に意識していた。
「……。」
虚無の使徒幹部は、
静かに笑う。
「さすがだな。」
「フェンリルの継承者。」
その言葉に、
ベスの剣が止まる。
風が吹く。
戦場の中央で。
二つの存在が、
静かに向き合っていた。




