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バル  作者: 隣の猫
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中央島の地下深く。


王城のさらに下。


誰も立ち入ることを許されない巨大な空洞があった。


そこには、古代文字が刻まれた八本の石柱。


その中央には、黒い石碑が静かに眠っている。


――ゴォン。


低い振動が空洞全体を揺らした。


石碑の表面へ、新たな亀裂が一本走る。


「……始まったか。」


老人は石碑の前で静かに目を閉じる。


隣に立つ王も険しい表情を浮かべていた。


「まだ完全ではない。」


老人は石碑へ手を添える。


「ですが。」


「変化は確実に起きています。」


王は静かに息を吐く。


「各地へ知らせるべきか。」


「まだ早いでしょう。」


老人は首を横に振る。


「今は混乱を広げる時ではありません。」


「見守るべき時です。」




その頃。


ベスは訓練場にいた。


今日の相手はレオン。


模擬戦ではあるが、互いに手を抜くつもりはなかった。


「始め!」


教官の合図。


同時にレオンが踏み込む。


速い。


以前よりさらに鋭い。


ベスは右手の剣で受け流し、


左腕の獣爪で反撃へ繋げる。


しかし。


レオンは一歩先を読んでいた。


「まだ甘い。」


木剣が肩へ触れる。


「くっ……。」


ベスは距離を取る。


呼吸を整える。


焦るな。


相手を見る。


身体全体を見る。


老人から教わった言葉を思い出す。




再び踏み込む。


今度は違う。


剣を振るう前に、


左肩をわずかに沈める。


レオンの視線が左腕へ向く。


その一瞬。


右の剣が流れるように軌道を変える。


カンッ!!


木剣同士がぶつかる。


レオンの表情が僅かに変わった。


「今のは……。」


初めて読まれなかった。


だが。


まだ決め切れない。


レオンは身体を捻り、すぐに反撃へ転じる。


十数合。


互いに譲らない攻防の末。


勝負は引き分けとなった。




周囲の若い戦士たちから驚きの声が上がる。


「レオンと互角……。」


「いつの間に。」


ベスは息を整えながら苦笑する。


「互角じゃない。」


「あと一歩、届かなかった。」


レオンは木剣を肩へ担ぐ。


「その一歩を越えるのが、一番難しい。」


そう言って笑った。




夕方。


ガルドはベスを見張り台へ呼び出した。


夕焼けが海を赤く染めている。


「景色は好きか。」


突然の問いだった。


「はい。」


「村には海がなかったので。」


ガルドは水平線を見る。


「俺も若い頃、この景色を見た。」


「強くなれば、何でも守れると思っていた。」


少しだけ笑う。


「違った。」


「どれだけ強くなっても、守れないものはある。」


ベスは黙って聞いていた。


「だから仲間を作った。」


「一人で届かない場所へ、仲間なら届く。」


ガルドはベスを見る。


「お前も、いつか誰かを導く日が来る。」


「その時、一人で背負うな。」


ベスは静かに頷いた。




その夜。


中央島の港。


誰も気付かない暗い場所に、


一隻の船が静かに停まっていた。


黒い外套をまとった数人の者たちが、


音もなく船から降りる。


その中の一人が、


遠くの城を見つめていた。


「……あれが。」


隣の者が尋ねる。


「どうしますか。」


男はしばらく沈黙する。


そして静かに答えた。


「まだだ。」


「今は見るだけでいい。」


視線の先には、


訓練場で剣を振るうベスの姿があった。


「彼がどこへ進むのか。」


「それを確かめる。」


男は静かに目を細める。


「時が来れば。」


「答えは向こうから現れる。」




誰も知らない。


この時、中央島へ訪れた者たちが、

























やがてベスたちの旅路で大きな意味を持つ存在になることを。

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