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バル  作者: 隣の猫
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338/399

ハード



砂の海を抜けた先。


灰鷹の一行は、荒野へと足を踏み入れていた。


照り付ける太陽。


乾いた大地。


遠くに見える岩山は、以前と変わらず静かに佇んでいる。


「やっと砂が終わったな」


レオンが肩を回しながら大きく伸びをする。


「靴の中の砂、まだ残ってる気がするんだけど」


「それはお前の気のせいだ」


ガルドが即答する。


「いや絶対入ってるって」


レオンは靴を軽く叩く。


「こういうの気になるだろ?」


「戦闘中に気にするな」


「戦闘中は気にしないよ、今は平和だし」


アイラが呆れたように息を吐く。


「平和って言えるの、ほんとすごいよね」


「褒めてる?」


「半分呆れてる」


「半分かよ」


レオンは笑いながら肩をすくめる。


その軽さに、場の空気が少しだけ緩む。


ベスはそのやり取りを見て、小さく息を吐いた。


以前なら、荒野に入った瞬間から張り詰めていた。


会話なんてほとんどなかった。


今は違う。


隣にいるのは、戦う仲間であり、旅の仲間でもある。


「……変わったな」


ベスがぽつりと呟く。


「何が?」


リシアがすぐに反応する。


ベスは少しだけ視線を上げる。


「この場所じゃなくて、俺たちの方だ」


昔は、


ここにあるもの全てが敵だった。


風も、地面も、影も。


でも今は、


ただの道に見える。


その時だった。


地面の奥から、低い振動が走る。


ガルドの表情が一瞬で変わる。


「来る」


言葉が落ちた瞬間。


岩陰が爆ぜるように割れた。


巨大な岩蜥蜴が飛び出す。


岩のような甲殻。


重い踏み込み。


荒野に適応した獣。


「またお前か」


レオンが嬉しそうに剣を回す。


「前よりデカくなってない?」


「成長してるのはお前だけじゃないってことだろ」


ガルドが前に出る。


「それはそれで嫌だな」


レオンは笑いながら構えを取る。


アイラはすでに弓を引いていた。


「遊んでる暇ないよ」


「分かってるって」


風が流れる。


アイラの視線が空気の揺れを追う。


「右、来る」


その瞬間。


ガルドが一歩踏み込み、突進を受け止める。


衝撃が地面を揺らす。


「重いな」


ガルドが低く呟く。


「でも止まってる」


レオンが横から滑り込むように斬り込む。


甲殻に火花が散る。


「硬ぇなこいつ!」


「だから言っただろ」


ガルドが押さえ込みながら返す。


その隙を逃さず、


ベスが一気に踏み込む。


無駄がない。


迷いもない。


一撃。


岩蜥蜴の動きが止まる。


「……終わりだな」


ベスが剣を引く。


重い音を立てて、魔物が崩れ落ちる。


静寂。


レオンは剣を肩に担ぎながら息を吐く。


「いやー、前より楽だったな」


「お前が一番気楽そうだな」


アイラが即座に突っ込む。


「気楽な方がいいだろ?」


「戦闘中にそれ言うのやめて」


「なんでだよ、事実じゃん」


ガルドはため息をつく。


「事実でも口に出すな」


「厳しいなぁ」


レオンは笑いながら頭をかく。


その様子を見て、


ベスはほんの少しだけ口元を緩めた。


強くなった。


それは間違いない。


だがそれ以上に、


この空気が変わったことの方が大きい。


荒野の風が吹く。


砂ではなく、乾いた大地の風。


灰鷹は、


何も気負わずに歩き出す。


それぞれの歩幅のまま、























大樹の神殿へと向かって。

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