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バル  作者: 隣の猫
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334/397

バーン



遺跡崩壊――五分前。


ベスとアイラが風の遺跡へ向かってから、およそ四時間が過ぎていた。


オアシスでは、静かな時間が流れている。


ノアは仲間たちの傷を診て回り、包帯を巻き直し、食事の支度まで終えていた。


「これでよし。」


小さく笑って手を払う。


灰猫を胸へ抱き寄せると、そのまま遺跡の見える場所まで歩いていく。


「まだかな……。」


視線の先には、風の遺跡。


二人の姿は見えない。


胸の奥が少しだけ落ち着かなかった。


「にゃ。」


灰猫が小さく鳴く。


ノアはそっと撫でる。


「大丈夫だよね……。」


その時。


「ノア。」


後ろからレオンが歩いてきた。


手には冷たい水が入った革袋。


「ほら。」


「ありがとう!」


ノアは嬉しそうに受け取る。


一口飲むと、ようやく肩の力が抜けた。


レオンはノアの頭をぽんと撫でる。


「心配するな。」


「……あいつらなら大丈夫だ。」


ノアが顔を上げる。


レオンは遺跡を見つめたまま、小さく笑った。


「バーンって出てくる。」


その直後だった。


ゴゴゴ……。


大地が震えた。


「……え?」


メキッ。


風の遺跡を支えていた柱へ、大きな亀裂が走る。


次の瞬間。


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


遺跡全体が激しく揺れ始めた。


「ベス!」


ノアは反射的に駆け出そうとする。


しかし。


「待て!」


レオンが腕を掴んだ。


同時に。


「にゃっ!」


灰猫も服へしがみつく。


「でも!」


「二人が!」


ノアの声が震える。


遺跡は今にも崩れそうだった。


柱が倒れる。


壁が砕ける。


砂煙が空へ舞い上がる。


轟音が辺りへ響き渡る。


そして。


ドォォォォォン!!


遺跡が完全に崩れ落ちた。


辺りは砂煙に包まれる。


誰も言葉を失った。


その時だった。


「だから言っただろ!」


「仕方ないじゃない!」


砂煙の向こうから声が聞こえる。


「まだ加減なんて分からないわよ!」


「遺跡まで壊すな。」


「壊そうと思ったわけじゃないもん!」


「結果は同じだ。」


「もう!」


砂煙の中から。


口喧嘩をしながら歩いてくる二つの影。


「……。」


レオンは目を丸くした。


そして苦笑する。


「な?」


「言っただろ。」


灰猫は小さくため息を吐くように。


「……にゃ。」


ノアは呆然と立ち尽くしていた。


やがて。


目の前まで歩いてきたベスとアイラを見て、小さく笑う。


「……おかえり?」


どこか困ったような声だった。


ベスは小さく頷く。


「ああ。」


アイラも照れくさそうに笑う。


「ただいま。」


レオンは崩れた遺跡を見て、大きく息を吐いた。


「遺跡壊したらダメだろ……。」


アイラは慌てて両手を振る。


「だから壊そうと思ったんじゃないって!」


「結果は壊れた。」


ベスが静かに言う。


「味方しなさいよ!」


そのやり取りに。


ノアは思わず吹き出した。


張り詰めていた空気が、一気にほどけていく。


風が静かに吹き抜ける。





















役目を終えた遺跡は、砂の中へ静かに眠っていた。

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