ウイン・ガ
夜のオアシス。
ベスの答えを聞いた後。
父鷹たちは、しばらく沈黙していた。
「……そうか。」
父鷹が静かに呟く。
神を憎んでいる。
しかし。
世界を憎んでいるわけではない。
その答えを、守護獣たちは受け止めていた。
母鷹はベスを見る。
その瞳には、まだ迷いが残っている。
だが。
敵を見る目ではなかった。
灰色の猫が小さく鳴く。
「にゃ。」
それだけ。
しかし。
父鷹は小さく頷いた。
「……そうだな。」
それ以上、何も言わない。
語れないものがある。
守護獣には、守護獣の役目がある。
だから。
伝えるべきものだけを伝える。
「継承者よ。」
父鷹はベスを見る。
「今のままでは、あの者には届かぬ。」
誰のことか。
聞く必要はなかった。
「虚無の盟主。」
その名に、周囲の空気が少し変わる。
地下神殿で感じた力。
誰もが理解していた。
まだ足りない。
「あの者の領域へ至るには、必要なものがある。」
父鷹は続ける。
「世界各地に残された光。」
「それを集めることだ。」
その言葉。
「光……。」
小さな呟き。
アイラだった。
全員が振り向く。
アイラは自分でも気付かないように、胸元へ手を伸ばす。
取り出したのは、一枚のメモ。
「これ……。」
ベスが見る。
「大樹の遺跡で見つけたものです。」
アイラは紙を開く。
そこには、以前記した言葉。
『残された光を探せ』
父鷹の目が細まる。
「……。」
静かにアイラを見る。
「お主。」
アイラは顔を上げる。
「風が見えておるのか。」
その言葉に、アイラは少し戸惑う。
「……風?」
自分でも分かっていない。
ただ。
感じる。
流れ。
違和感。
そこに残されたもの。
「私は……。」
「風の流れが分かるだけです。」
父鷹はしばらく黙る。
そして。
「ふむ。」
短い言葉。
「なるほど。」
その反応に、アイラは首を傾げる。
父鷹はベスを見る。
「継承者よ。」
「この光を探す旅には、お主だけでは足りぬ。」
そして。
アイラを見る。
「お主も必要だ。」
アイラが驚く。
「私が……?」
「ああ。」
父鷹は頷く。
「風を読む者。」
「そして、継承者。」
「二人で遺跡へ向かえ。」
静かな夜。
新たな道が示された。
「この大陸に残された光は。」
父鷹が続ける。
「このオアシスの水の底。」
「眠る遺跡にある。」
ベスは静かに頷く。
アイラは手の中のメモを見る。
大樹の遺跡。
残された光。
夜は深い。
だが。
次へ進む道は、確かに見えていた。




