アストレ
「ベス!」
「ノア!」
夜空から降りた影が、二人の前に着地した。
「あっ、小鷹!」
ノアがすぐに駆け寄る。
「よかった!」
「無事だったんだね!」
小鷹も嬉しそうに頷く。
「うん! 二人も!」
ベスは短く息を吐いた。
「ああ。お前も元気そうだな。」
「元気!」
「父さんも母さんも!」
小鷹は弾む声で答える。
そのやり取りを見ていた灰鷹の団員たちも、ようやく緊張を解いた。
ガルドが静かに口を開く。
「その子が、地下神殿で……。」
ベスは頷く。
「そうです。助けた守護獣の子供です。」
小鷹はぺこりと頭を下げた。
「助けてもらいました!」
「ありがとうございました!」
ガルドは穏やかに返す。
「礼を言うのはこちらだ。」
「君がいなければ、彼らも危なかった。」
小鷹は少し照れたように笑った。
「えへへ。」
すぐに思い出したように顔を上げる。
「そうだ!」
「神殿に光が落ちたの、見えたんだ!」
「父さんも母さんもびっくりしてて……。」
「母さんが言ったんだ。」
『神殿も気になる。でも、まずはあなたを助けてくれた人たちの様子を見てきなさい。』
『きっと無事じゃないはずだから。』
「って。」
ノアは柔らかく笑う。
「いいお母さんだね。」
小鷹は大きく頷いた。
「うん!」
「だから来た!」
「みんな無事でよかった!」
周囲を見渡したあと、小鷹は胸を張る。
「帰りは任せて!」
「オアシスまで案内するよ!」
「一回来た道だから!」
ベスは短く答えた。
「ああ。頼む。」
その一言で、小鷹の表情がぱっと明るくなる。
「任せて!」
夜の空気の中で、緊張は完全にほどけていた。
黒い山の静けさの中、次の旅路へ向けて時間だけがゆっくりと流れていく。




