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バル  作者: 隣の猫
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315/398

セルエ



ゴゴゴゴゴゴ……!!




地下神殿は。


崩れ始めていた。




天井が砕ける。


石柱が倒れる。


床に亀裂が走る。




「全員、脱出するぞ!!」




ガルドの声が響く。




誰も振り返らない。


ここに残れば。


全員が巻き込まれる。




ガルドを先頭に。


レオン、アイラ、リシア。


そしてノアも続く。




ノアの腕の中には。


灰色の猫。


「猫さん……大丈夫?」


「……。」


返事はない。


「猫さん?」


「……寝てる。」


「寝てないよね?」


「……。」


いつものような返事。


ノアは少しだけ笑う。




でも。


その身体が傷ついていることを。


ノアは分かっていた。




あの戦いの中で。


猫は。


ノアを守った。


導きの巫女を守るために。


今は。


ノアが猫を抱えている。


「ありがとう。」




小さな声。


猫は目を閉じたまま。


「……にゃあ。」


とだけ返した。




その時。


ゴォォォォ……!!


巨大な音が響く。


「危ない!!」




上から。


巨大な瓦礫が落ちてくる。




その先には。


ノア。




猫が顔を上げる。


だが。


身体は動かなかった。


限界だった。




次の瞬間。


ベスが走った。


考えるより先に。


身体が動いていた。




「ベス!?」


ノアの前に立つ。


左腕を掲げる。


ズドォォン!!




瓦礫が砕ける。


衝撃が地下神殿全体に響いた。




「ベス……。」


ノアが見上げる。


「大丈夫だ。」


ベスは短く答える。




「先に行け。」


「でも……。」


「俺は問題ない。」




その言葉に。


迷いはなかった。




その瞬間。




ゴゴゴゴゴゴ……!!


さらに奥の通路が崩れる。




「ベス!!」


ガルドが叫ぶ。


ベスも手を伸ばす。


あと少し。


届く距離。




だが。


巨大な岩壁が落ちる。


轟音。


土煙。


二人の間を。


完全に塞いだ。




「ベス!!」


ガルドは足を止める。


戻るか。


進むか。




一瞬。


迷いが生まれる。




仲間を置いていけない。


だが。


ここで全員が止まれば。


全員が危険になる。


「……。」




その時。


「団長ーー!!」


別の声が響いた。


ガルドが振り返る。


崩れた壁の向こう。


灰鷹の団員が立っていた。


「こっちです!!」


「退却路を作っていました!!」


「まだ進めます!!」


ガルドは目を見開く。


「お前たち……。」


生きていた。


灰鷹の仲間が。


「団長!!」


「急いでください!!」



ガルドは。


もう一度だけ。


崩れた壁を見る。


「ベス……。」


拳を握る。



「必ず迎えに行く。」


そう残して。


走り出した。


静かになった。


暗い地下神殿。


ベスは一人。


残されていた。


「……。」


周囲を見る。


出口は塞がっている。


戻る道もない。


「……どうする。」


一瞬。


迷う。




だが。


ベスは剣を握る。


「……行くしかない。」


その時。


暗闇の奥から。


声が響いた。


「……久しぶり。」


ベスが振り返る。


そこにいたのは。




















ユナだった。

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