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バル  作者: 隣の猫
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アルレシア




封印の間に静寂が戻る。


床に落ちた石片が、遅れて乾いた音を立てた。


ベスは息を整える。



左腕の銀色の装甲に、淡い光が残っている。


それを、盟主は見ていた。


「……合格だ。」




短い声。


感情はない。


「共に神を殺そう。」


「世界を救おう。」


一歩、踏み出す。


距離が詰まる。





「そして――」


目が細められる。


「セレネを救おう。」





その名で、ベスの動きが止まった。


空気が変わる。


「……待て。」


低い声。


ベスの剣がわずかに上がる。




「なんでだ。」


「なんで、あんたがその名前を知っている。」


沈黙。


盟主は答えない。




ただ、ベスを見ている。


「セレネは……」


ベスは言いかけて、止める。


遺跡で出会った少女。


救うと決めた存在。


それを、この男が口にした。




「どこで知った。」


問いは短い。


盟主は動かない。


「……」


言葉が出ない。


長い沈黙のあと、ようやく口を開く。




「神を殺す。」


「世界を救う。」


「セレネを救う。」


ベスの目が鋭くなる。




「繋がってない。」


盟主は一度だけ目を伏せた。


「そうか。」


それだけだった。


続かない。


沈黙が落ちる。





やがて盟主は、わずかに息を吐く。


「言葉では届かない。」


ベスの剣に力が入る。


「何を言っている。」


盟主はもう答えない。




視線を奥へ向ける。


石碑。


それだけを見ている。


「見ろ。」


短く言う。


ベスは動かない。


「何をだ。」


盟主は振り返らない。




「これを。」


石碑の前に立つ。


手を伸ばす。


指先が触れた瞬間。


古代文字が光を持つ。


一つ、また一つ。


封印がほどけていく。


空間が揺れる。



リシアが息を呑む。



アイラは壊れた弓を握り直す。



レオンは目を細める。



ガルドはただ、盟主を見ている。



少し離れた場所。


ノアの隣に灰猫がいた。



先ほどまでノアを守るために力を使い切っている。


今は動けない。


ノアは灰猫を見下ろし、次に光を見る。


「……」


言葉はない。



ただ、胸の奥がざわつく。


何かが来る。


それだけが分かる。


灰猫もまた、光の気配だけを感じていた。


それ以上は届かない。




石碑の光が強くなる。


盟主の声が落ちる。


「見届けろ。」


一拍。


「これが――」


光が封印の間を満たす。


「世界に残された歴史だ。」


そして。





























記憶が開く。

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