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バル  作者: 隣の猫
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304/398

ラグナリィ



ドン。


完全な亡霊となったガルドが床を蹴る。


その姿は消えた。


いや。


誰の目にも映らなかった。




次の瞬間。


ガギィィィン!!


封印の間へ凄まじい衝撃音が響く。


盟主の黒い刃と、


亡霊の灰色の剣。


真正面から激突した。




盟主が初めて一歩退く。


床が砕ける。


空気が震える。


だが。


ガルドは止まらない。




一撃。


また一撃。


灰色の剣が休むことなく振るわれる。


黒い影が受ける。


斬る。


受ける。


斬る。


ただ、


前へ。




「守る。」


小さく呟く。


それは、まだ自分に向けた言葉だった。


ここで足を止めれば終わる。


倒れれば、もう誰も前へ出られない。




「守る。」


次の一歩で、言葉の向きが変わる。


吹き飛ばされたレオン。


折れた弓を握りしめるアイラ。


こちらを見つめ剣を支えに立っているリシア。


その背中を、ここで終わらせない。




「守る。」


さらに低く、深く。


地下神殿で交わした約束が胸の奥で鳴る。


『次は仲間を守ってやれ』


クロムから託された仮面の半分。


破ったままでは終われない。


あの言葉を、ここで裏切ったままにはしない。




「守る。」


今度は、灰鷹の団長として。


ベスが見ている。


弟子に心配されるような背中ではなく、


信じて預けられる背中でいなければならない。


仲間を守る。


灰鷹を守る。


その先にある未来まで、ここで繋ぐ。




その言葉だけを繰り返しながら、


ガルドは剣を振るい続けた。




ガギィィィン!!


一際重い衝撃。


灰色の剣が、


ついに盟主の防御を押し切る。




銀でもない。


灰でもない。


亡霊の刃が、


盟主の身体へ届く。




ズバッ。




黒い外套が裂けた。


盟主の身体へ、


初めて確かな一撃が刻まれる。




封印の間が静まり返る。


虚無の使徒たちも動かない。


レオンも。


アイラも。


リシアも。


ベスも。


ただ、


その一撃だけを見ていた。




ガルドは剣を下ろさない。


灰色の瞳だけが、


静かに盟主を見据えていた。


「守る。」


今度の一言は、


もう自分のためでも、約束のためだけでもない。


ここにいる仲間を。


託された未来を。


灰鷹の名を。


そのすべてを守り抜くための言葉だった。




静かな封印の間へ、



















その言葉だけが残った。

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