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バル  作者: 隣の猫
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アストレリオ



キィィィン!!


灰色の刃と氷剣が重なる。


リシアは踏みとどまった。


押し返されそうになる腕に力を込める。

ここで退けば、すべてが崩れる。

そう分かっていたから、歯を食いしばって耐えた。




ガルドが前へ出る。


灰色の剣が盟主を押す。


リシアはその横へ滑り込む。


長剣。

短剣。

二本の氷剣が、ガルドの剣筋を支えるように重なる。


一人では足りない。

でも、二人ならまだ繋げる。

そう信じて、リシアは刃を振るった。




一撃。

二撃。

三撃。




止める。

逸らす。

繋ぐ。


そのたびに腕が痺れ、呼吸が乱れる。

それでも止まらない。

止まれない。




盟主は崩れない。


その事実だけが、じわじわと胸を締めつけた。




その瞬間だった。




「……!」




ガルドの姿が、視界の端からふっと消えた。


リシアの心臓が跳ねる。




「団長!」




振り向く。


左奥。


ガルドがいる。


さっきまで隣にいたはずなのに、もうあんなに離れている。

たった一瞬で、手を伸ばしても触れられない場所へ行ってしまった。




ガルドもこちらへ来ようとしている。


必死に戻ろうとしているのが分かる。

なのに、距離だけが残酷に広がっていく。




「団長!」




リシアも走る。


足を前へ出す。

剣を握る手に、さらに力を込める。

追いつかなければ。

今ここで離れたら、もう二度と繋げない気がした。




それでも。




あと数歩。


そのわずかな距離が、どうしても埋まらない。


焦りが喉を焼く。

胸の奥で、何かが軋む。

違う。

こんなところで、離されてたまるものか。




「っ……!」




目の前。




盟主。




黒い仮面。




もう、そこにいた。


リシアは息を呑む。

ガルドへ伸ばしかけた意識を、無理やり目の前へ引き戻す。


今は、追うな。

今は、守れ。

今ここで止めなければ、すべてが終わる。




リシアは止まる。


氷剣を構える。




一撃目。




キィィィン!!




長剣で受ける。


重い。

腕が沈む。

骨まで響く衝撃に、膝が折れそうになる。


それでも、離さない。

ここで耐える。

まだ、終わらせない。




二撃目。




返る刃。




短剣へ持ち替える。




キィン!!




逸らす。


刃の軌道をずらしながら、必死に食らいつく。

一瞬でも隙を作れば、すべて持っていかれる。

だから、指先まで神経を張り詰めた。




三撃目。




来る。




避けられない。




氷が走る。


盾を作る。


リシアの中で、白銀の加護がさらに強く脈打つ。

間に合わせる。

今度こそ、間に合わせる。




間に合わない。




「……っ!」




ガギィィィン!!




衝撃。




氷が砕ける。




身体が浮く。




そのまま、


地下神殿の床を大きく滑った。




ドォォン!!




壁へ叩き付けられる。




「……。」




息ができない。


胸の奥が潰れたように痛む。

視界が揺れる。

それでも、手だけは離さなかった。


剣だけは、絶対に離さなかった。




視界が滲む。




遠く。




ガルドが、


こちらへ走っている。


その姿が見える。

必死に、まっすぐに、戻ろうとしている。


でも。




間に合わない。




その距離だけは、






















最後まで縮まらなかった。

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