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バル  作者: 隣の猫
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ミオス



パキ……


静かな音が封印の間へ響いた。


盟主の仮面。


その表面へ走った一本の亀裂。


誰も動かない。


ただ、その小さな変化だけを見つめていた。




レオンは息を吐く。


「届いた……。」


掠れた声。


アイラも弓を下ろさない。


リシアも剣を構えたまま。


ガルドだけは静かに盟主を見据えていた。


まだ終わっていない。


そう、本能が告げていた。




盟主は何も言わない。


ゆっくりと亀裂へ触れる。


指先が細い傷をなぞる。


怒りもない。


焦りもない。


ただ静かだった。




(継承者。)


予測の範囲だった。


ここまでは。


だが。


静かに視線が動く。


ベスではない。


灰鷹。


レオン。


アイラ。


リシア。


ガルド。


ノア。


全員を見る。




(五秒。)


その一言。


理由も。


説明も。


誰も求めなかった。




誰も迷わない。


誰も止まらない。


役割だけを果たす。


まるで最初から、


そう決まっていたかのように。




「……。」


仮面の奥で、


僅かに瞳が細くなる。




「面白い。」


それだけだった。




盟主は静かに左腕を持ち上げる。


黒いガントレット。


ゆっくりと、


自らの仮面を掴む。




「ここからだ。」


パキ……


パキパキ……


バキィィィィン!!


乾いた破砕音。


盟主は、


自ら仮面を握り潰した。




砕け散る破片。


しかし。


その奥に顔はなかった。


黒い霧ではない。


影。


闇そのものが、


顔へ張り付くように覆っている。


輪郭だけが人。


瞳だけが、


深い闇の中で静かに光っていた。




ズズズズ……


封印の間の空気が変わる。


黒い霧ではない。


もっと深く。


もっと重い。


底知れない闇が、


盟主の身体から静かに溢れ始める。




レオンの背筋へ冷たいものが走る。


「……何だ。」


アイラは息を呑む。


風が読めない。


空気そのものが止まっていた。


リシアも小さく呟く。


「違う……。」


「今までとは。」




ベスは剣を握り直す。


左腕のフェンリルが静かに震える。


本能だけが叫んでいた。




逃げろ。




その瞬間。


盟主が、ゆっくりと前へ出た。


最初の一歩ではない。


仮面を砕いたその場で、なお沈黙していた重圧が、足元から一気に解き放たれる。


カツン――。


靴底が石床を打つ。


たったそれだけの音だった。


だが、その一歩はただの移動ではなかった。


封印の間に満ちていた圧が、踏み込みと同時に一点へ収束し、次の瞬間、解き放たれたからだ。


床の紋様が黒く脈打つ。


石柱が低く軋む。


天井を走る封印の線が、見えない衝撃に揺れる。


空間そのものが、盟主の一歩に耐えきれず震えた。


カツン――。


その音が遅れて響いた時には、もう遅い。


足音が原因であり、震えはその結果だった。


たった一歩。


それだけで、

























封印の間全体が震えた。

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