表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バル  作者: 隣の猫
PR
295/404

ルゼリオ



ドクン。


ドクン。


ドクン。


フェンリルの鼓動だけが、

封印の間に響いていた。


「五秒。」


その声から、

ちょうど五秒。


ベスは目を開く。


「……行く。」


短く吐いた。


銀色の巨大な前脚が、

床を踏む。


ドン。


小さい音だった。


だが次の瞬間、

石床に銀の爪痕が走る。


一本。


二本。


十本。


百本。


無数の軌跡が、

一気に広がった。


盟主は動かない。


右手だけが揺れる。


黒い影が、

迎え撃つ。


槍。


剣。


鎖。


斧。


ガギィン!


ガギィン!


ガギィン!


銀の軌跡が砕ける。


消える。


また砕ける。


レオンが息を呑む。


「何を……」


誰にも分からない。


ベスも言わない。


ただ、

立っている。


最後の軌跡が砕けた。


盟主が右手を下ろす。


「……終わりか。」


その瞬間だった。


ベスが消えた。


「!」


レオンの目でも追えない。


アイラの風読みでも追えない。


リシアも。


ガルドも。


一瞬で見失った。


次の瞬間。


ガギィィン!!


盟主の真横で火花が散った。


「……!」


盟主が初めて、

身体ごと向きを変える。


黒い刃が、

紙一重で剣を受け止めていた。


「そこか。」


低い声。


だが、

ベスはもういない。


ガギィィン!!


今度は真上。


銀の剣が落ちる。


黒い影が受ける。


ガギィン!!


背後。


ガギィン!!


左。


ガギィン!!


真正面。


金属音が、

連続で炸裂する。


「見えねぇ……」


レオンが呻く。


ベスは飛んでいる。


いや、

違う。


空間そのものを駆けている。


「何だ……あれ」


アイラの風読みでも追えない。


風だけが、

あり得ない場所から吹く。


盟主が剣を振るう。


一撃。


二撃。


三撃。


だが、

すべて半歩遅い。


初めてだった。


盟主が、

後手に回る。


「……ほう。」


口元が、

わずかに動く。


その瞬間。


ベスが真正面に現れた。


銀の剣が、

一直線に走る。


盟主が受ける。


黒い刃。


灰色の影。


ガギィィィン!!


封印の間が震えた。


空気が弾ける。


黒い影が揺らぐ。


ベスは止まらない。


剣を引かない。


そのまま身体を捻る。


勢いを殺さず、

さらに一歩。


懐へ。


「……!」


初めて、

盟主の表情が変わる。


銀の刃が、

仮面を掠めた。


パキ。


乾いた音。


黒い仮面に、

細い亀裂が走る。


静寂。


誰も動けない。


レオンが目を見開く。


アイラの弓が下がる。


リシアが息を呑む。


ガルドだけが、

静かにベスを見ていた。


届いた。


初めて。
























  

盟主へ、

一撃が届いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ