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バル  作者: 隣の猫
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294/404

アネルヴィ



黒い影が、再び封印の間を覆った。


槍。剣。鎖。斧。


盟主は一歩も動かない。


右手をわずかに振るだけで、影が獣のようにうねり、四方から殺到する。




レオンが割って入った。


ガギィィン!!


「ベス!」


大剣が黒槍を叩き潰す。


その一瞬で、影の圧がわずかに緩む。




ヒュンッ!!


アイラの矢が走る。


風読みで軌道を裂き、影の進路をずらす。


「右!」


レオンが即座に踏み込み、黒い刃を弾き飛ばした。




リシアが滑り込む。


白銀の加護が広がり、氷剣が影を受け流す。


「まだです!」


押し返す。


繋ぐ。


そのためだけに、身体を投げ出す。




ガルドの灰色の剣が影を断った。


キィィン!!


黒い刃が霧散する。


だが、次がすぐに生まれる。


終わらない。


止まらない。




その時、ベスが口を開いた。


「……五秒。」




誰も聞き返さない。




「分かった。」


レオンが笑い、さらに前へ出る。




「任せて。」


アイラは弓を引き絞り、風だけを追う。




「必ず。」


リシアが一歩踏み込み、加護を強めた。




ガルドはベスを一度だけ見て、黙って頷く。




全員が動く。


何をするのかは知らない。


それでも、ベスを信じている。




五秒が始まった。




レオンが盟主へ踏み込む。


ガギィィン!!


大剣が影を砕き、黒い流れを引き寄せる。




アイラの矢が続く。


一本。二本。三本。


影の軌道をずらし、レオンの動きを通す。




リシアが加護で道を繋ぐ。


黒い刃を受け止め、押し返し、また受ける。


そのたびに、前へ進む隙を作る。




ガルドは灰色の剣で、影だけを斬り続けた。


一本。


また一本。


迫る黒を、ただ断ち切る。




その間、ベスは動かない。




銀色の前脚が、ゆっくりと床に触れた。




フェンリルが、静かに脈打つ。


ドクン。


ドクン。


ドクン。

























五秒。


まだ誰も、その意味を知らなかった。

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