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バル  作者: 隣の猫
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292/424

アルゼ



黒い影が静かに揺れる。


封印の間へ、


重い静寂だけが落ちていた。




盟主は動かない。


右手をゆっくり下ろす。


それだけで、


無数に伸びていた黒い影が静かに床へ沈んでいく。


槍。


斧。


剣。


鎖。


鎌。


全てが、


何事もなかったかのように闇へ溶けた。




誰も動かない。


レオンは肩で息をする。


アイラは弓を下ろさない。


リシアも白銀の加護を纏ったまま、


剣先だけは盟主へ向け続けていた。


ガルドもまた、


灰色の霧を静かに漂わせながら立っている。




盟主は、


四人を順番に見た。


何も言わない。


ただ、


静かに。




レオン。


傷だらけ。


それでも立っている。




アイラ。


血が目元を伝う。


それでも弓を下ろさない。




リシア。


加護を使い続け、


身体は限界に近い。


それでも仲間の前へ立つ。




ガルド。


灰色の亡霊。


魔を払う光で弱まった力。


それでも、


影を見抜いた。




沈黙。




ベスだけではない。


盟主の視線は、


初めてその四人へ向けられていた。




長い沈黙のあと、


黒い仮面の奥から、


小さく息が漏れる。




「……。」




誰にも聞こえないほど小さい。




右手が、


ほんの僅かに止まる。




次の瞬間には、


何事もなかったように、


再び黒い影が足元へ広がり始めた。




レオンは大剣を握り直す。


アイラは弦へ指を掛ける。


リシアは呼吸を整える。


ガルドは静かに剣を構えた。




誰も、


その一瞬の沈黙が意味するものを知らない。




封印の間へ、




























再び黒い影が静かに広がっていった――その中心で、盟主の仮面だけが、まるで内側から何かに押し上げられるように、かすかに軋んでいた。

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