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バル  作者: 隣の猫
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シャウラ



鐘の音が中央島中へ響き渡る。


王国兵の叫び声が広場を駆け抜けた。


「北部砦が魔物の大群に包囲された!」


「討伐部隊は直ちに出撃せよ!」


休息していた戦士たちの空気が一変する。


笑い声は消え、


それぞれが武器を手に取った。


ガルドは灰鷹の団員たちを見回す。


「出るぞ。」


短い一言。


それだけで十分だった。




北部砦までの道中。


数百人の戦士たちが一斉に駆ける。


王国騎士。


各地から集まった傭兵。


魔法を扱う者。


弓兵。


槍兵。


様々な武器。


様々な戦い方。


これほど多くの戦士が集まる光景を、ベスは初めて見た。


「すごい……。」


思わず呟く。


「見惚れるな。」


ガルドは前を向いたまま言う。


「どれだけ数がいても。」


「戦場では、一瞬の判断が命を分ける。」


ベスは静かに頷いた。


その意味を、


砦へ着いた瞬間に理解することになる。




北部砦の城壁は、すでに半分以上が崩れていた。


煙が立ち上る。


兵士たちの怒号。


負傷者を運ぶ姿。


そして城壁の外。


そこに広がっていたのは――


黒い波だった。


狼型。


猪型。


飛行型。


数え切れない魔物が砦を取り囲んでいる。


さらにその奥には、


巨大な影がいくつも見えた。


「……こんな数。」


ベスは息を呑む。


「怖いか。」


隣でレオンが尋ねる。


ベスは少しだけ黙った。


そして。


「怖い。」


正直に答える。


レオンは少し驚いた顔をする。


「でも。」


ベスは剣を握る。


「逃げたら。」


「この砦にいる人たちが死ぬ。」


レオンは静かに笑った。


「その答えなら十分だ。」




戦いが始まる。


城門が開く。


討伐部隊が一斉に突撃した。


ベスも走る。


右手の剣。


左腕の獣爪。


狼型の魔物が飛び掛かる。


受け流す。


斬る。


次。


また次。


動きは以前より滑らかになっていた。


ガルドとの稽古。


レオンとの戦い。


老人から聞いた言葉。


全てが身体へ残っている。


だが。


敵は減らない。


一体倒せば、


十体が押し寄せる。


戦場とは、


一人の力だけではどうにもならない場所だった。




その時。


「子どもがいる!」


叫び声が響く。


城壁近く。


崩れた瓦礫の下に、


小さな少女が取り残されていた。


その前には魔物。


ベスは迷わなかった。


「ベス!」


レオンの声。


それでも走る。


少女を抱き上げる。


その瞬間。


背後から爪が迫る。


避けられない。


そう思った。


ガキィン!!


鋭い音。


巨大な盾が魔物の爪を受け止めていた。


「無茶をするな。」


古参団員のボルグだった。


「一人で全部背負うな。」


その横を、


一本の矢が飛ぶ。


エインの矢。


魔物の動きを正確に止める。


「周りを見ろ。」


短い言葉。


ベスは息を呑む。


灰鷹は、


自分一人で戦う団ではない。


誰かが守り。


誰かが支え。


誰かが決める。


ガルドが踏み込み、


最後の一体を斬り伏せた。




少女は震えながらベスへしがみつく。


「ありがとう……。」


その小さな声。


その笑顔。


ベスの胸へ、過去の記憶が蘇る。


燃える村。


失った家族。


何も守れなかった自分。


でも。


今は違う。


守れた。


今度は守れた。




しかし。


戦場に安堵はなかった。


砦の奥から角笛が鳴り響く。


兵士が叫ぶ。


「西門が破られた!」


「大型種が侵入した!」


空気が変わる。


ガルドの目が鋭くなる。


「灰鷹。」


「西門へ向かう。」


全員が走り出す。




その途中。


ベスは崩れた塔の上へ視線を向けた。


そこに。


一人の黒衣の男が立っていた。


風に揺れる黒い外套。


顔は見えない。


ただ。


左腕には、


自分とよく似た獣爪が装着されていた。


ベスは足を止める。


男もこちらを見る。


しばらく。


互いに何も言わなかった。


やがて。


男は僅かに口元を歪める。


笑った。


次の瞬間。


黒衣の男の姿は消えていた。


「……誰だ。」


呟く。


「ベス!」


ガルドの声。


「今は前を見ろ!」


「……はい!」


ベスは再び走り出す。


だが。


胸の奥には小さな違和感が残っていた。


あの男は何者なのか。


なぜ自分と同じ獣爪を持っているのか。


答えはまだ分からない。




西門。


巨大な咆哮が響く。


地面が揺れる。


若き戦士たちへ、
























新たな試練が迫っていた。

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