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バル  作者: 隣の猫
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289/409

ヴェリ



闇が伸びた。




ベスの足元。


床へ落ちた影が、


ゆっくりと形を変える。


次の瞬間。


漆黒の槍が、


地面を突き破った。




ベスは横へ跳ぶ。


一瞬遅れていたなら、


身体を貫かれていただろう。


着地。


同時に武器を構える。




闇は揺れる。


槍が消える。


次の瞬間。


長剣。




正面から迫る。


キィィン!!


受け止める。


衝撃。


足元の石床へ亀裂が走る。



押し返す。


しかし。


その武装は霧のように消えた。




次。


短剣。




距離が違う。


速度が違う。


左右から迫る二つの凶器。


左腕。


フェンリルの前脚が動く。


銀色の爪が闇色の短剣を弾く。


ギィン!!




攻勢は止まらない。




斧。




巨大な斬撃が振り下ろされる。


ベスは武器を合わせる。


ガギィィン!!


受け止めた瞬間、


身体が沈む。




槍。




後方。


死角。


影が伸びる。


ベスは振り向かず、


フェンリルの前脚で防ぐ。




大剣。




一撃の重さが変わる。


避ける。


床が砕ける。




影が姿を変えるたび、


攻撃の距離も。


速度も。


重さも。


全てが変化する。




剣士。


槍使い。


斧使い。


暗殺者。




複数の戦士が、


一つの闇の中に潜んでいるようだった。




ベスは攻め込めない。




防ぐ。


避ける。


受け流す。




それだけだった。




闇が床を這う。


今度は遠距離。




鞭。




しなる一撃が、


死角から迫る。


ベスは身体を沈める。


その瞬間。


足元から鎖が伸びた。




鎖鎌。




フェンリルの前脚が地面を砕く。


鎖を弾き飛ばす。




だが。


その気配は消えない。




双刃。




二つの切っ先が回転する。


ベスは武器を構える。


キィィン!!


火花が散る。




一つの武装へ対応すれば、


次の形が襲い来る。




闇そのものが、


無数の武器だった。




盟主は動かない。




ただ。


右手が僅かに動く。




その動きに合わせるように、


影の具現だけが姿を変えていく。




漆黒の武装。


闇の具現。


影の奔流。




ベスの身体へ傷が増える。


それでも。


倒れない。




だが。


前へ出る隙がない。




それでも。


今は。


防ぎ続けるしかなかった。





闇の武装と白銀の光が、


何度もぶつかり続ける。




戦いは、
























まだ始まったばかりだった。

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