ミルセジュ
キィィィン!!
地下神殿に、
金属音が爆ぜた。
最初の一撃。
探りではない。
殺しに来ている。
レオン。
アイラ。
リシア。
三人とも、すぐに悟った。
目の前の存在は、
普通の虚無の使徒じゃない。
本来なら。
仮面を砕く。
亀裂を入れる。
人外の力を削る。
そこから、ようやく始まる。
だから。
最初から全力だ。
レオンの大剣が、
灰色の刃へ叩き込まれる。
ガギィィィン!!
受けた瞬間、
レオンは見抜く。
重い。
だが、ただ重いだけじゃない。
押し留める剣。
その場に縫い付ける剣。
動きを奪う剣。
それが、今のレオンだ。
ガルドは流す。
剣を滑らせる。
力を逃がす。
崩しにかかる。
だが。
レオンは離さない。
押さえた力を、
次へ繋ぐ。
その瞬間。
身体が流れる。
レオンは迷わない。
腰へ手を伸ばす。
小剣。
逆手。
大剣で止める。
相手が逃がす。
その力を使う。
右へ回る。
踏み込む。
跳ぶ。
その勢いのまま、
逆手の小剣が落ちる。
鷹の爪。
獲物を裂く一撃。
だが。
キィィィン!!
灰色の刃が割り込んだ。
ガルドが防ぐ。
小剣の軌道が逸れる。
「……。」
レオンは目を細める。
届かない。
今の一撃なら、
本来は決まっていた。
それでも。
目の前の虚無の使徒は崩れない。
ヒュンッ!!
次に飛んだのは、
アイラの矢だった。
限界まで研ぎ澄ました集中。
風を見る。
空気の揺れを見る。
相手が動く前の、
ほんの僅かな変化まで拾う。
その代償に、
目元から赤い線が流れる。
視界が滲む。
それでも、
弓は下ろさない。
アイラは狙う。
身体じゃない。
仮面だ。
力の中心だ。
矢が走る。
一本。
二本。
三本。
避ける先を読む。
その先も読む。
さらに先まで読む。
全てを潰す矢。
だが。
ガルドは風を断つ。
灰色の剣が一閃。
キィン!!
矢が弾かれる。
全部だ。
「……っ。」
アイラの視界が揺れる。
それでも、
まだ見ている。
リシアが踏み込む。
だが。
加護は使えない。
体力が戻っていない。
白銀の力は呼べない。
だから。
剣だけで行く。
仲間が作った一瞬を、
次へ繋ぐ。
それが今のリシアの全てだ。
キィン!!
細身の剣が、
灰色の刃を逸らす。
だが。
ガルドは崩れない。
三人は距離を取る。
短い間。
それだけで分かる。
全力だ。
最初から。
迷いはない。
それでも。
届かない。
レオンは大剣を握り直す。
アイラは血の滲む目を細める。
リシアは震える腕で剣を構える。
それでも。
三人は下がらなかった。




