ルヴィオ
黒い山の神殿。
その最深部。
巨大な石扉の前に、
ガルドは立っていた。
目の前の扉。
黒い石で造られた巨大な門。
表面には古代文字。
複雑な紋様。
そして。
淡く光を放つ封印の刻印。
完全な闇ではない。
長い年月、この場所を守り続けた力が、
僅かな光となって神殿を照らしていた。
ガルドは扉へ手を触れる。
冷たい。
長い時間を過ごしてきた石の感触。
力を込める。
しかし。
扉は動かない。
「……。」
一度、手を離す。
剣を抜く。
刃を当てる。
それでも。
変化はない。
「開かぬか。」
頭の上で灰猫が呟く。
ガルドは剣を収める。
「普通の封印ではない。」
「力で破るものではないようだ。」
灰猫は尻尾を揺らす。
「ならば。」
「別の方法を試すしかあるまい。」
ガルドは静かに息を吐く。
目を閉じる。
足元から、
灰色の霧が広がった。
ゆっくり。
静かに。
身体へ絡み付いていく。
腕。
肩。
胸。
全身を包む。
灰色の亡霊。
ガルドは再び扉へ手を伸ばす。
灰色の霧が封印へ触れる。
淡い光が揺れる。
刻まれた文字が反応する。
一瞬。
確かに。
扉の紋様が強く輝いた。
しかし。
次の瞬間。
光は消える。
扉は開かない。
「……。」
ガルドは静かに目を開く。
この力でも足りない。
そういうことか。
灰猫が小さく息を吐く。
「厄介じゃな。」
「虚無の盟主が待つ場所。」
「簡単に辿り着かせるつもりはないらしい。」
ガルドは扉を見る。
その奥にあるもの。
それは、
世界を壊した真実。
そして。
今も続く戦いの中心。
その時だった。
ヒュンッ!!
空気を裂く音。
ガルドの身体が反応する。
考えるより先に、
横へ踏み込む。
一本の矢が、
頬を掠めて飛んでいく。
次の瞬間。
間髪入れず。
別の攻撃。
剣。
一直線に迫る。
ガルドは反射的に手を動かす。
キィィン!!
地下神殿へ、
鋭い金属音が響き渡った。




