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バル  作者: 隣の猫
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ミザール



中央島へ到着して一週間。


若い戦士たちは、それぞれ初めての共同任務を命じられた。


内容は単純。


港町の北にある森で、旅人を襲う魔物の群れを討伐すること。


だが今回は、傭兵団ごとの任務ではない。


各地から集まった戦士たちを組ませ、


互いの戦い方を知るための訓練でもあった。




灰鷹から選ばれたのは四人。


ベス。


レオン。


アイラ。


そしてリシア。


「私も同行するんですね。」


リシアは少しだけ首を傾げる。


腰にはいつもの細身の剣。


しかし、その姿を見たレオンは少し不思議そうに尋ねた。


「治療師なのに剣を持ってるんだな。」


リシアは柔らかく笑う。


「護身用です。」


「旅をしていると、必要になることもありますから。」


その答えに、レオンは納得したように頷いた。


アイラも特に気に留めない。


だが。


ベスだけは知っていた。


(違う。)


あれは護身用なんかじゃない。


あの剣は、


この人が本当に必要な時に振るうためのものだ。


けれど。


リシアが隠しているなら、


自分から言うつもりはなかった。




森へ入る。


昼間だというのに薄暗い。


風もない。


鳥の声も聞こえない。


「静かすぎる。」


レオンが周囲を見る。


アイラはしゃがみ込み、地面へ視線を落とした。


「足跡があります。」


指先で土をなぞる。


「狼型が複数。」


少し間を置く。


「それと……。」


深く残った跡を見る。


「大型が一体。」


ベスも足跡を確認する。


大きい。


だが。


途中で消えていた。


「消えた?」


アイラが周囲を見回す。


その瞬間。


「上です。」


リシアが静かに言った。


全員が顔を上げる。


次の瞬間。


巨大な影が枝を突き破って落下した。


熊に似た魔物。


しかし。


腕は異様に長く、


鋭い鉤爪が光っている。


「散れ!」


四人が同時に飛び退く。


地面が砕けた。




「俺が正面を引き受ける!」


レオンが前へ出る。


大剣を構え、


魔物の爪を受け止める。


轟音。


足元へ亀裂が走った。


「重い……!」


だが、その瞬間。


狼型の魔物が横から迫る。


「右!」


アイラの声。


矢が飛ぶ。


狼型の動きを止める。


「助かった!」


「周りを見て。」


短い言葉。


それだけで戦況が変わる。




ベスは大型の魔物と向き合う。


剣を振るう。


浅い。


獣爪を叩き込む。


硬い。


「どうする……。」


焦るな。


見る。


ガインとの模擬戦。


老人の言葉。


『相手を見る。』


魔物は右腕ばかり使っている。


左腕はほとんど動いていない。


「怪我をしているのか。」


次の攻撃。


ベスは右へ踏み込む。


魔物は右腕で迎え撃つ。


身体が開く。


「今!」


獣爪を地面へ突き立てる。


土煙が舞う。


視界が塞がれる。


その隙へ回り込む。


狙うのは首ではない。


傷ついた左肩。


ザンッ!


魔物が大きく吠える。


動きが止まる。




「合わせるぞ!」


ベスが叫ぶ。


レオンが踏み込む。


二人の攻撃が重なる。


ベスが隙を作り、


レオンが最後を決める。


魔物はゆっくりと倒れた。




戦闘が終わる。


「怪我を見せてください。」


リシアがすぐに動く。


レオンの腕。


アイラの小さな傷。


戦闘で負った怪我を確認する。


淡い光が傷を包む。


「助かる。」


レオンが笑う。


「治療師がいると安心するな。」


リシアも微笑む。


「皆さんが無事なら、それで十分です。」


ベスはその横顔を見る。


誰かを倒すためではなく、


誰かを守るために戦う人。


それがリシアだった。




森を出る頃。


ベスは振り返る。


最後に決めたのはレオン。


弱点を見つけたのは自分。


アイラが支えた。


リシアが守った。


一人では勝てない。


だから仲間がいる。


「これが……。」


「仲間と戦うってことか。」


その言葉を、


ベスは静かに胸へ刻んだ。




その夜。


遠く離れた森の奥。


誰にも気付かれない場所で、


黒い影が静かに灰鷹を見つめていた。


その存在は何も語らない。


ただ。


成長していく者たちを見届けるように、






















闇の中へ消えていった。

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