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バル  作者: 隣の猫
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268/409

アル



ギィィィィィィッ――!!


幼い鷹が叫ぶ。


その声と同時に、黄金の翼が大きく広がった。


ドォォォォォン!!


地下神殿を揺るがす衝撃が一直線に走る。


床が砕ける。


石柱が吹き飛ぶ。


崩れた天井から巨大な岩塊が降り注いだ。


「ノア!」


ベスは反射的に前へ出る。


剣へ手を掛ける。


その瞬間だった。


左腕が焼けるように熱を帯びる。


「……っ!」


考えるより早い。


剣を抜くより早く、


銀色の魔力が左腕から溢れ出した。


肩まで白銀の装甲が駆け上がる。


蒼白い紋様が浮かび、


巨大な狼の前脚が二人を包み込むように顕現した。


ドォォォォォン!!


黄金の衝撃と銀色の前脚が激突する。


地下神殿全体が悲鳴を上げた。


ベスは息を呑む。


フェンリルを呼んだ覚えはない。


それでも巨大な前脚は微動だにせず、ノアを抱き寄せるように前へ突き出されていた。


ギィィィィィッ!!


幼い鷹が再び咆哮する。


黄金の姿が消えた。


「どこだ!」


右。


違う。


左。


背後。


見えない。


次の瞬間。


バギィィィン!!


黄金の爪がフェンリルの前脚へ叩き付けられる。


衝撃だけで石床が弾け飛んだ。


ベスの身体ごと後ろへ押し込まれる。


「くっ!」


踏み止まる。


しかし止まらない。


黄金の翼が一振りされるたび、


地下神殿が壊れていく。


柱が折れる。


壁が裂ける。


床が崩れ落ちる。


フェンリルの前脚は守り続ける。


それでも押される。


また押される。


ベスは一歩踏み出す。


近付かなければ。


止めなければ。


もう一歩。


その瞬間。


黄金の翼が目の前で広がった。


轟ッ!!


凄まじい衝撃が叩き付けられる。


フェンリルの前脚が受け止める。


だが、


ベスは前へ出られない。


一歩も。


近付けない。


ギィィィィィィッ!!


幼い鷹はなお叫び続ける。


暴れるたびに地下神殿が震える。


砕ける。


崩れる。


その姿は守護獣ではなかった。


長い苦しみを吐き出す災厄そのものだった。


ベスは歯を食いしばる。


「……止まれ。」


声は届かない。


黄金の翼は止まらない。


フェンリルが守っている。


それでも。






















何一つ、止められなかった。

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