表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バル  作者: 隣の猫
PR
267/417

ルガース



地下神殿。


静かな回廊を、ベスとノアは歩いていた。


足音だけが響く。


崩れた柱。


砕けた壁。


落ちた天井の瓦礫。


地上から落下した衝撃で、神殿の一部は大きく崩れていた。


それでも。


黒い石で造られた古代の神殿は、まだその姿を保っている。




ベスは周囲へ視線を走らせる。


気を抜かない。


ここにはまだ敵がいる可能性がある。


虚無の使徒。


あの黒い外套の者たち。


どこから現れてもおかしくない。


左腕へ意識を向ける。


フェンリル。


だが、すぐには解放しない。


力を使えば身体へ負担がかかる。


必要な時まで残しておく。


今守るべきなのは、自分だけではない。


隣を歩く小さな存在。


「ノア。」


「うん?」


「俺から離れるなよ。」


ノアは小さく頷く。


「分かってる。」


少しだけ笑う。


「ベスもね。」


その言葉に、ベスは苦笑した。




ズン……。


突然。


地下神殿全体が僅かに震えた。


ベスが足を止める。


「……。」


音は聞こえない。


何が起きているのかも分からない。


ただ。


遠くで巨大な力がぶつかっている。


そんな感覚だけが伝わってきた。


ノアが不安そうに見上げる。


「みんな……。」


ベスは静かに答える。


「ああ。」


「大丈夫だ。」


根拠があるわけではない。


でも。


信じていた。


ガルドも。


レオンも。


アイラも。


リシアも。


簡単に倒れる人たちではない。


「だから。」


「俺たちは進もう。」




しばらく歩いた時だった。


ノアが突然立ち止まる。


「……。」


「どうした?」


ノアは静かに辺りを見る。


「また。」


「聞こえる。」


ベスの表情が変わる。


「声か?」


ノアは頷く。


「うん。」


「でも……。」


胸元へ手を添える。


「今までと違う。」


「悲しい声。」


「ずっと、苦しんでる。」


その瞬間。


ベスの腰にしまっていたものが淡く光る。


黄金の羽。


オアシスで受け取ったもの。


黄金の鷹が託したもの。


それが静かに輝いていた。




ベスは羽を見る。


「あの鷹……。」


思い出す。


傷付いた雄の鷹。


守るために残った黄金の鷹。


最後の言葉。


『我が子を、お願いします。』


その意味を。


今、初めて理解した。


「行こう。」


ノアが頷く。


二人は羽の光へ導かれるように歩き始めた。




やがて。


巨大な扉の前へ辿り着く。


そこには。


翼を広げた鷹の紋章が刻まれていた。


ベスが触れる。


黄金の羽が強く輝く。


ゆっくりと。


扉が開いていく。




その奥。


古い祭壇。


崩れた魔法陣。


そして。


中央に一羽の小さな鷹がいた。


黄金の羽。


まだ幼い身体。


しかし。


その姿には守護獣の血が宿っていた。


だが。


翼には黒い鎖。


身体を縛るように。


力を奪うように。


虚無の力が絡み付いている。




ノアが小さく息を呑む。


「……苦しい。」


ベスは拳を握る。


敵ではない。


これは。


傷付けられているだけだ。


「お前も……。」


「利用されたのか。」


黒い魔法陣。


封印の痕跡。


虚無の力。


すべてが答えを示していた。


守護獣を守るための封印ではない。


力を引き出すための檻だった。




黄金の羽がさらに輝く。


親から子へ。


守護獣から守護獣へ。


残された想いが繋がる。


黒い鎖へ光が走る。


パキッ。


小さな音。


一つ。


また一つ。


封印が崩れていく。




しかし。


解放は救いだけではなかった。


長い間。


無理やり力を奪われ続けた。


苦しみ。


恐怖。


孤独。


それら全てが一気に溢れ出す。


「……!」


鷹の子供が目を開く。


黄金の瞳。


次の瞬間。


黒い霧が爆発した。


地下神殿全体が大きく震える。


ベスはノアの前へ立つ。


剣を抜く。


「ノア。」


「下がって。」


黄金の翼が広がる。


その力は。


ベスの想像を遥かに超えていた。


「……。」


ベスは静かに構える。


「助ける。」


「絶対に。」




























守るための戦いが、始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ