エルディオ
灰色の亡霊が動く。
それだけだった。
次の瞬間。
クロムの目の前へ現れる。
灰色の剣が振り下ろされた。
黒い影が受け止める。
しかし。
一瞬で砕け散る。
クロムは影を広げる。
無数の黒い刃。
四方から迫る。
だが。
灰色の亡霊は止まらない。
避けない。
防がない。
ただ進む。
刃が身体を裂く。
それでも。
歩みは止まらない。
クロムは距離を取る。
影を纏う。
姿を消す。
別の場所へ現れる。
虚無の使徒として磨き上げた戦い方。
だが。
灰色の亡霊は迷わなかった。
現れた瞬間。
そこへ剣が走る。
黒い短剣と灰色の剣がぶつかる。
衝撃。
クロムの腕が沈む。
受け止められない。
影で力を逃がす。
それでも。
灰色の亡霊の剣は止まらない。
クロムは影を増やす。
無数の自分。
無数の刃。
普通なら判断できない。
しかし。
灰色の亡霊はただ一つを見る。
最も壊すべきもの。
そこへ向かう。
黒い影が砕ける。
灰色の剣が迫る。
クロムは最後の力で影を集めた。
黒い壁。
幾重もの防壁。
それでも。
灰色の刃は止まらない。
一枚。
二枚。
三枚。
全てを切り裂く。
クロムの仮面へ亀裂が走る。
灰色の亡霊は剣を振り抜いた。
黒い仮面が、
半分に割れる。
「……。」
クロムの身体が揺れる。
虚無の力が崩れていく。
黒い霧が静かに消える。
立っていた身体が、
ゆっくりと膝をつく。
灰色の亡霊は、
倒れたクロムへ剣を向ける。
そこに迷いはない。
ただ。
狩る対象が消えただけだった。
そして。
虚無の使徒クロムは、
静かに崩れ落ちた。




