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バル  作者: 隣の猫
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262/404

カルミオ



衝撃音が響き渡る。


灰色の剣。


黒い影。


二つの力がぶつかり合うたび、


空間そのものが震える。




ガルドは動く。


一歩。


それだけで距離が消える。


灰色の霧を纏った刃が走る。


クロムの影が壁となる。


黒い影が受け止める。


しかし。


灰色の剣圧が影を押し裂いた。


ズン……。


重い衝撃が響く。




クロムの影が広がる。


床。


壁。


天井。


あらゆる場所から黒い刃が伸びる。


だが。


ガルドは止まらない。


避けない。


最小限の動きだけで影の間を抜ける。


一本。


二本。


十本。


迫る影を斬りながら、


ただ前へ進む。




クロムが姿を現す。


黒い刃。


灰色の刃。


真正面からぶつかる。


衝撃。


空気が弾ける。


二人の足元へ力が集中する。


それでもその場は耐え続ける。


二つの人外の力を受け止めながら。




ガルドの剣が押し込む。


クロムが影で受ける。


一瞬。


黒い影が揺らぐ。


その隙。


ガルドは踏み込む。


灰色の刃が仮面へ迫る。




クロムは影を集める。


黒い壁。


ガルドは構わない。


正面から斬る。


灰色の剣圧が走る。


影が裂ける。


仮面へ届く。


しかし。


その瞬間。


黒い影が爆発した。




衝撃。


ガルドの身体が吹き飛ぶ。


床を滑る。


だが。


すぐに立ち上がる。


傷。


血。


全て無視する。


剣を握る。




灰色の霧が揺れる。


まだ足りない。


今の力では届かない。




その瞬間。


ガルドの中で何かが切れた。


今まで何度も抗ってきた。


黒い霧に染まった時も。


灰色の亡霊になった時も。


決して完全には渡さなかった。


自分自身を。




だが。


今は違う。


目の前にいるのは、


二十年前から続く因縁。


失った仲間。


守れなかった過去。


そして。


今守るべき仲間。




ガルドは目を閉じる。


「……。」


言葉にはしない。


ただ。


力を受け入れる。




灰色の霧が爆発した。


空間全体へ圧力が広がる。


灰色の光が剣を包む。


身体へ絡み付く霧が、


さらに濃くなる。




一瞬。


ガルドの瞳に光が戻る。


ベス。


レオン。


アイラ。


リシア。


ノア。


灰鷹の仲間たち。


その姿が浮かぶ。




(守る。)


最後に残った意思。


それだけを胸に抱く。




しかし。


次の瞬間。


灰色の霧が、その意思すら包み込んだ。


思考が薄れる。


感情が遠ざかる。


声が聞こえなくなる。




もう一度。


剣を握る。


そこにいたのは、


灰鷹の団長ガルドではない。


まだ形だけを残した、


灰色の亡霊だった。




クロムの影が揺れる。


目の前の変化を理解する。


今までとは違う。


力が増したのではない。


存在そのものが変わった。




ガルドは静かに剣を向ける。


そこに迷いはない。


ただ一つ。


目の前の存在を狩る。


その本能だけが残っていた。




少し離れた場所で、


灰猫は静かに目を細めていた。


そして。


小さく呟く。


「……。」


長い沈黙。


「……呑まれたか。」


その声だけが、























静かな空間へ落ちていった。

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