表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バル  作者: 隣の猫
PR
260/400

シオン



灰色の剣と黒い影が激突する。


重く鋭い衝撃音が地下神殿を揺らした。


ガルドは踏み込む。


一瞬で間合いを潰す。


灰色の霧をまとった刃が横薙ぎに走る。


クロムは短剣を交差させて受け止める。


衝撃。


床へ蜘蛛の巣のような細い亀裂が走る。


だが神殿は崩れない。


古き封印の神殿は、


なお二人の力を受け止め続けていた。




クロムの影が膨れ上がる。


一本。


十本。


百本。


床を這うように広がった黒い影が、一斉にガルドへ牙を剥く。


ガルドは剣を振るう。


灰色の剣圧。


一直線に走る斬撃が影をまとめて斬り裂いた。


影は霧となって消える。


しかし。


消えた場所から、また新たな影が生まれる。


終わらない。


まるで底がない。




ガルドは止まらない。


剣を返す。


振り下ろす。


斬り上げる。


灰色の霧が剣筋をなぞり、


一振りごとに剣圧が地下神殿を裂いていく。


その度に空気が震え、


石柱から細かな砂がさらさらと零れ落ちた。




クロムは静かだった。


影だけが動く。


本体は最小限しか動かない。


ガルドの一撃を受け、


影で死角を埋め、


次の一撃へ繋げる。


まるで地下神殿そのものが、


クロムの剣になったようだった。




ガルドは影を斬る。


本体を斬る。


また影。


また本体。


灰色の霧はさらに濃くなる。


その代わり、


世界が少しずつ静かになっていく。


剣がぶつかる音。


石が軋む音。


影が這う音。


全てが遠くなる。


視界に映るのは、


クロムだけ。




灰色の瞳がわずかに揺れる。


黒い影を見る。


違う。


敵を見る。


違う。


斬る。


ただ斬る。


その衝動だけが、


胸の奥で静かに膨らみ始めていた。




石柱の陰。


灰猫は静かにその様子を見つめる。


「……。」


小さく目を細める。


灰色の霧は今までとは違う。


抑え込まれていない。


受け入れられたからこそ、


少しずつガルドそのものを侵食していた。




クロムが踏み込む。


影が左右から迫る。


ガルドは避けない。


真正面から剣を振り抜く。


灰色の剣圧が影を呑み込み、


そのままクロムまで届く。


クロムは初めて大きく後ろへ跳んだ。


黒い外套の裾が裂ける。


仮面の亀裂も、


ほんの僅かだけ広がった。




その瞬間だった。


ガルドの口元から、


低い笑みが漏れる。


自分でも気付かない。


勝利の笑みではない。


獲物を追い詰める者の笑み。


その瞳から、
























灰色の霧が静かに溢れ始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ