フェルガ
灰色と黒が交差する。
二人が同時に床を蹴った。
その姿は、一瞬で視界から消える。
次の瞬間。
地下神殿の中央で重い衝撃音が炸裂した。
空気が震える。
柱へ絡み付いていた影が一斉に揺れ、
灰色の霧が渦を巻きながら周囲へ広がった。
ガルドは止まらない。
剣を振るう。
灰色の霧が刃へ絡み付き、
振り抜いた軌道そのものが灰色の剣圧となって走る。
一直線。
黒い影を斬り裂く。
影は霧となって散る。
しかし。
その奥には、もう一本。
さらにもう一本。
無数の影が壁から剥がれ落ちるように現れ、
一斉にガルドへ襲い掛かった。
ガルドは床を蹴る。
灰色の残像だけがその場へ残る。
次の瞬間には影の群れを抜け、
クロムの懐へ入り込んでいた。
速い。
もはや人の動きではない。
クロムも応じる。
黒い刃が交差する。
衝撃。
地下神殿へ重い音が響き渡る。
灰色の剣圧。
黒い影。
二つの力がぶつかるたび、
床へ灰色と黒い筋が幾重にも刻まれていく。
神殿は耐える。
だが。
柱の表面へ細かな亀裂が一本、また一本と増えていった。
クロムは距離を取らない。
無数の影だけが離れていく。
影は床を走り、
柱を登り、
天井を這い、
四方八方から同時に襲い掛かる。
一本ではない。
十本でもない。
数え切れない。
ガルドは灰色の剣を振るう。
剣圧が飛ぶ。
影を断つ。
断っても。
また生まれる。
終わらない。
灰色の霧がさらに濃くなる。
ガルドの動きは速くなる。
反応も。
踏み込みも。
剣を返す速度さえ、
先程までとは別物だった。
影が迫る。
ガルドは振り返らない。
背中へ迫る影だけを、
灰色の剣圧で斬り裂く。
正面ではクロム。
横では影。
上下からも影。
それでも。
ガルドは全てへ反応していた。
その代わり。
呼吸が少しずつ浅くなる。
灰色の瞳が、
さらに色を失っていく。
剣を握る右手へ、
灰色の霧が深く絡み付く。
ほんの僅か。
ガルドの口元から、
白い息ではなく、
灰色の霧が漏れた。
クロムは静かに剣を構える。
影はまだ尽きない。
ガルドも構える。
灰色の霧はさらに濃くなる。
二人は同時に床を蹴る。
今度の激突は、
地下神殿そのものが低く唸るほどの衝撃を伴っていた。




